プランテーション・ソング

プランテーション・ソングは、アメリカ合衆国における南北戦争（1861年-65年）以前の奴隷制時代、南部の農園（プランテーション）で労働を強いられていた黒人奴隷たちによって歌われた歌の総称です。スレイヴ・ソング（slave songs）、あるいは農園歌とも呼ばれます。

彼らが苦難の中で生み出した歌は、当初「ニグロ・スピリチュアル」（The Negro Spirituals）と呼ばれていました。これらの歌は、多くの場合、作曲者すら不明であり、深い哀愁と、やり場のない感情が込められた曲想が特徴です。歌詞には、奴隷としての過酷な労働や、自由への渇望、家族や故郷への想いが込められており、彼らの心の支えとなっていたと考えられます。南北戦争後には、単に「スピリチュアル」と呼ばれることが多くなりました。

著名な作曲家であるスティーブン・フォスターも、黒人霊歌（ニグロ・スピリチュアル）の影響を受け、数多くの楽曲を作りました。「ケンタッキーの我が家」は、不作によって離散を余儀なくされた黒人一家の悲劇を描いた作品であり、「故郷の人々（スワニー河）」、「主人は冷たい土の中に」、「おおスザンナ」なども、プランテーション・ソングとして知られています。これらの楽曲は、当時の社会情勢を反映し、歌詞には黒人を指す差別的な表現が含まれている場合もあります。

当時、人気を博していた娯楽の一つに、ミンストレル・ショーがありました。これは、歌やジョークを織り交ぜた舞台ショーであり、映画が普及する以前のアメリカにおいて、非常に人気のある娯楽でした。白人が顔を黒く塗り、誇張された衣装を身に着けて、プランテーション・ソングやクーン・ソングなどの黒人音楽を歌い踊るという内容でした。しかし、このショーは、黒人に対するステレオタイプを助長し、差別を肯定する側面があったことも否定できません。

プランテーション・ソングは、アメリカの奴隷制の歴史を語る上で欠かすことのできない重要な文化遺産です。これらの歌は、奴隷たちの苦しみや希望、そして人間性を今に伝える貴重な証言であり、その音楽的価値とともに、歴史的・社会的な意義も深く認識されるべきでしょう。

関連語句：

ゴスペル
黒人霊歌
* 黒人音楽

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