プラント・オパール

プラント・オパールとは

プラント・オパール（plant opal）は、植物の細胞組織に形成される非結晶の含水珪酸体（SiO2·nH2O）です。Phytolith、Opal phytolith、Grass opalなどの別名でも知られています。

生成のメカニズム

植物は、根から土壌中のケイ酸（水に溶けたケイ酸塩）を吸収します。吸収されたケイ酸は、特定の細胞の細胞壁に蓄積され、ガラス質の細胞体を形成します。この現象は、イネ科、カヤツリグサ科、シダ[[植物]]、コケ[[植物]]などで特に顕著に見られます。中でも、表皮細胞や樹木類の維管細胞、表皮細胞などが蓄積しやすい箇所として知られています。

例えば、竹（イネ科）が持つ柔軟性や非導電性は、規則正しく密集したプラント・オパールによる植物骨格組織に由来します。これは、グラスファイバーのような構造によって実現されています。

また、サボテン、イラクサ、ナス科植物、バラ科植物などに見られる植物体表皮の棘や、イネ科植物の葉の辺縁に見られる微鋸歯も、プラント・オパールから派生した組織です。これらの組織は、珪酸や珪酸とカルシウムからなる複合成分でコーティングされたガラス質の物質で構成されており、動物の鱗と似た役割を果たしています。同様の構造は、珪藻の被殻や放散虫の骨格にも見られ、動植物の境界を越えた共通性を示唆しています。

応用研究

プラント・オパールは、植物が枯死した後も腐敗せずに土壌中に残存します。植物の種類によって形状が異なるため、プラント・オパールを分析することで植物の種類を特定できます。この特性を利用して、花粉分析と組み合わせて古代の植生環境を推定する研究が行われています。

花粉は広範囲に拡散するため、広域的な環境の推定には適していますが、局所的な環境の推定には不向きです。一方、プラント・オパールは飛散しにくく、乾燥地や酸性土壌など花粉が残りにくい環境でも遺存するため、局所的な環境や植生の分析に役立ちます。

特に、イネ科植物はプラント・オパールが残りやすい性質を持つため、稲作の起源を探る研究に広く利用されています。その結果、作物学や考古学の分野では、イネ科植物の同定に「オリザニンオパール」という名称が用いられることもあります。ただし、イネのプラント・オパールは粒径が小さく、雨水と共に地下に浸透する可能性があるため、発見された地層の年代がそのまま栽培の証拠となるとは限りません。年代推定の精度を高めるため、プラント・オパール中の炭素14（14C）を利用した放射年代測定も試みられています。

日本における研究と応用

日本国内では、以下のような研究や応用が行われています。

青森県、三内丸山遺跡におけるイヌビエ栽培の可能性の検証
日本国内外の稲作の年代推定と伝播経路の解明
イネの品種推定
吉野ヶ里遺跡、桑田遺跡の稲作時期の特定
プラントオパールを研磨に利用したトクサの活用
タケ（竹）由来のプラントオパールを使用したスピーカーの開発

このように、プラント・オパールは、考古学、農学、材料工学など、幅広い分野で活用されています。

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