プラード・カザルス音楽祭

プラード・カザルス音楽祭は、フランスのプラードという美しい村で毎年7月末から8月中旬にかけて開催される、世界的に著名な音楽祭です。カニグー山の麓に佇むサン・ミシェル・ド・キュクサ修道院を舞台に、室内楽を中心とした質の高い演奏が繰り広げられます。

音楽祭の起源

この音楽祭は、20世紀を代表するチェリストであり指揮者であったパブロ・カザルスの存在が大きく関わっています。スペイン内戦を避けてプラードに隠遁していたカザルスは、演奏活動から遠ざかっていました。しかし、第二次世界大戦後、彼の音楽への復帰を求める声が世界中から高まりました。
カザルスは当初、復帰を拒んでいましたが、友人のヴァイオリニスト、アレクサンダー・シュナイダーの熱心な説得により、1950年にヨハン・ゼバスティアン・バッハの没後200年を記念する音楽祭をプラードで開催することを決意しました。この音楽祭が、プラード・カザルス音楽祭の始まりです。

著名な音楽家たちの参加

音楽祭には、カザルス自身の演奏に加え、クララ・ハスキル、ミェチスワフ・ホルショフスキ、アイザック・スターン、マルセル・タビュトー、ヨゼフ・シゲティ、ルドルフ・ゼルキン、ポール・トルトゥリエなど、当時を代表する名だたる音楽家たちが参加しました。彼らの卓越した演奏は、音楽祭を最高峰の室内楽の祭典としての地位を確立しました。カザルスは1966年、90歳を迎えた年に最後の音楽祭出演を果たしました。

若手育成と音楽祭の発展

1976年には、プラード音楽アカデミーが設立され、若い演奏家を対象とした器楽と室内楽のマスタークラスが開講されました。このアカデミーは、次世代の音楽家育成に大きく貢献しています。2005年からは作曲コンクールも創設され、音楽祭は新たな才能の発掘にも力を入れています。

プラード・カザルス音楽祭は、パブロ・カザルスの音楽への情熱と平和への願いを受け継ぎ、半世紀以上にわたり、世界中の音楽ファンに感動を与え続けています。美しい自然に囲まれた歴史的な修道院で、一流の音楽家たちの演奏を堪能できるこの音楽祭は、音楽愛好家にとって特別な体験となるでしょう。

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