プリスカの戦い

プリスカの戦い：皇帝の死とブルガリアの勝利

プリスカの戦いは、811年に第一次ブルガリア帝国と東ローマ帝国の間で起こりました。この戦いは、ブルガリアが勝利し、東ローマ帝国の皇帝ニケフォロス1世が戦死するという、歴史的な出来事となりました。皇帝の戦死は、西ローマ帝国時代のウァレンス帝以来のことであり、その衝撃は大きいものでした。

背景

9世紀初頭、ブルガリアはクルム・ハーンの指導の下で勢力を拡大していました。807年には、後にブルガリアの首都となるソフィアを占領するなど、その勢いは目覚ましいものがありました。東ローマ帝国の皇帝ニケフォロス1世は、このブルガリアの脅威に対処するため、大規模な軍隊を率いてブルガリアへの侵攻を決意しました。

戦闘の経過

ニケフォロス1世率いる東ローマ軍は、ブルガリアの首都プリスカを占領し、町を焼き払い、徹底的に破壊しました。ブルガリアのクルム・ハーンは和平を提案しましたが、ニケフォロス1世はこれを拒否し、さらなる進軍を続けました。しかし、クルム・ハーンは着々と反撃の準備を進めていました。彼は、東ローマ軍の侵攻ルートに密かに柵を建設し、退路を遮断する策略を巡らせていたのです。

そして、811年7月25日、バルビツィア峠に差し掛かった東ローマ軍は、ブルガリア軍の夜襲を受け、壊滅的な打撃を受けました。退路を断たれた東ローマ兵たちは、高い柵を乗り越えようとしましたが、次々と命を落としました。皇帝ニケフォロス1世もこの戦いで戦死し、東ローマ軍は大敗を喫しました。伝説によれば、ニケフォロス1世の頭蓋骨は髑髏杯にされ、クルム・ハーンに献上されたと伝えられています。

名称について

バルビツィア峠は、プリスカの西南約80km、プレスラフの西南約30kmに位置しています。ニケフォロス1世率いる東ローマ軍がプリスカを占領した際、そこにはわずかな守備隊しかいませんでした。このことから、この戦いは「プリスカの戦い」ではなく、「バルビツィア峠の戦い」と呼ぶ方がより適切であるという意見もあります。実際、ブルガリア語版のウィキペディアでは、「Битка при Върбишкия проход（バルビツィア峠の戦い）」という名称が用いられています。

結論

プリスカの戦いは、第一次ブルガリア帝国と東ローマ帝国の間の勢力関係を大きく変えることになった重要な戦いです。この戦いで東ローマ帝国は皇帝を失い、ブルガリアは更なる勢力拡大の足掛かりを築きました。戦いの名称については議論の余地があるものの、この戦いが両国に与えた影響は計り知れません。

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