プリズナーズ・オブ・ゴーストランド

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』（Prisoners of the Ghostland）

作品概要

2021年に公開されたアメリカのスリラー映画。日本の映画監督・園子温にとって、初の海外製作・英語作品となる意欲作です。主演には個性派俳優として知られるニコラス・ケイジを迎えています。スリラーというジャンルに加え、終末論的な世界観、アクション、西部劇、SF、ファンタジーなど様々な要素が混じり合った、独特の異世界を描いています。

あらすじ

物語の主人公は、「ヒーロー」と呼ばれる凄腕のプロ犯罪者。彼はその名を知られた存在でしたが、ある日、銀行強盗に失敗し、裏社会を支配する強大な権力者「ガバナー」の怒りを買います。ガバナーはヒーローに対し、自らのもとから逃げ出した養女「バーニス」を連れ戻すよう命令します。この危険な任務を引き受けたヒーローは、バーニスの行方を追う中で、「ゴーストランド」と呼ばれる謎の町にたどり着きます。ゴーストランドは、古き東洋と荒廃した西部が奇妙に融合したような、暴力がすべてを支配する無法地帯でした。ヒーローは、この狂気に満ちた土地で、バーニスを探し出すための壮絶な戦いに巻き込まれていきます。

主要キャスト

ヒーロー：ニコラス・ケイジ
バーニス：ソフィア・ブテラ
ガバナー：ビル・モーズリー
サイコ：ニック・カサヴェテス
ヤスジロウ：TAK∴
スージー：中屋柚香
ラットマン：YOUNG DAIS
ステラ：古藤ロレナ
ナンシー：縄田カノン
キュリ：栗原類
ナベ：渡辺哲
ガムボーイ：潤浩
* 忍者：鈴木聖奈

製作背景

本作の企画は、2018年12月に発表されました。日本の異才として注目される園子温監督が、初めて海外のプロダクションと組んで英語で映画を製作するというニュースは大きな話題を呼びました。主演に決定したニコラス・ケイジは、脚本を読んだ段階で自身のキャリアの中でも「最もワイルドな映画になるだろう」と語り、作品への強い期待を示していました。

しかし、製作の準備が進む中、2019年2月に園監督が心筋梗塞により緊急手術を受けるという事態が発生。これを受けて、プリプロダクション作業は一時中断を余儀なくされました。監督の回復を待ち、同年11月に日本国内で主要撮影（プリンシパルフォトグラフィー）が開始されました。撮影監督は谷川創平が担当しています。その後、2020年3月にはアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスでも追加撮影が行われました。

キャストには、ニコラス・ケイジ、ソフィア・ブテラ、ビル・モーズリーといった国際的に活躍する俳優陣に加え、TAK∴、YOUNG DAIS、栗原類、渡辺哲ら日本の個性的な俳優たちも名を連ねており、国内外の才能が融合した作品となっています。

公開

完成した本作は、2021年1月31日に開催された世界的な映画祭、サンダンス映画祭でワールドプレミア上映されました。このプレミアでの評価を受け、配給会社であるRLJEフィルムズが本作の配給権を獲得。その後、2021年9月17日にアメリカ合衆国にて劇場公開およびビデオ・オン・デマンドでの配信が開始されました。

評価

批評家からの評価は、賛否両論となりました。映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では、70人の批評家のレビューに基づき、76%のフレッシュ（支持）率を獲得し、平均評価は10点満点中6.4点を記録しました。同サイトの総評では、園監督の過去作と比べると異なる部分もあるものの、ニコラス・ケイジの爆発的でユーモラスな演技が光る、ジャンルの枠を超えた作品として、特定の観客層には楽しめるだろうと述べられています。

一方で、別の批評サイト「Metacritic」では、14人の批評家レビューに基づく加重平均スコアは100点満点中54点となり、「賛否両論」という評価に留まっています。

具体的な批評としては、「スクリーン・デイリー」紙が園監督のビジョンを評価し、「様々な影響が混在しているが、ケイジのエネルギーが圧倒的で魅力的だ」と肯定的に評しました。「バラエティ」誌は賛否両論のレビューを掲載しつつも、「どこか不思議と、ケイジと園監督の組み合わせには納得がいく」と、二人のユニークな個性の親和性に触れています。

総じて、本作は園子温監督の持ち味である過激なバイオレンス表現や独特の美学、そしてニコラス・ケイジの予測不能な演技が融合した、強烈なインパクトを残す作品として受け止められています。

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