プリンス・オブ・エジプト

プリンス・オブ・エジプト

『プリンス・オブ・エジプト』は、1998年にドリームワークス・アニメーションが製作し、アメリカで公開されたミュージカルアニメーション映画です。この作品は、旧約聖書の『出エジプト記』を元に、エジプトの王子モーセが如何にしてユダヤ人をエジプトから導き出す運命を辿るまでの人生を描いた感動的なストーリーです。

映画の企画は、ドリームワークス共同設立者のジェフリー・カッツェンバーグが1980年代から提案をしていた「『十戒』のアニメ化」に遡ります。彼はウォルト・ディズニー・カンパニーに在籍中、このアイデアを提示しましたが、実現には至りませんでした。しかし、ドリームワークス設立後、カッツェンバーグは仲間のスティーブン・スピルバーグと共にこのプロジェクトを形にすべく動き出しました。

製作には34カ国から集まった350人以上のアーティストが参加し、作品は従来のアニメーション技術とCG技術を融合させることで、ビジュアル面でも大きな革新を果たしました。そして、1998年12月に劇場公開されると、全世界で2億1800万ドル以上の興行収入を記録し、ディズニー以外のアニメーション作品では当時最も成功した作品となりました。

本作は、奴隷として苦しむイスラエル人の状況を背景に、エジプト王家に育てられるモーセの成長と自己発見の物語を中心に展開します。モーセは、偶然出会ったイスラエル人の女性ミリアムとの出会いや、奴隷が虐げられる現場を目撃したことをきっかけに心に葛藤を抱えるようになります。やがて、兄ラメセスとの対立を経て、自由を求めてエジプトを後にすることを決意します。

映画の最大の魅力は、音楽です。スティーブン・シュワルツが手掛けた楽曲「ホエン・ユー・ビリーヴ」は、マライア・キャリーとホイットニー・ヒューストンによって歌われ、大ヒットを記録しました。この曲は第71回アカデミー賞では歌曲賞を受賞し、本作が音楽的にも評価される要因となりました。

映画自体は映像表現の美しさだけでなく、キャラクターの人間らしい感情表現やストーリー展開も評価されています。批評家からは「史上最も美しいアニメーションの一つ」と評されることが多く、特に特殊効果やCGとの融合が際立った作品として称えられました。特にシカゴ・サンタイムズのロジャー・イーバートは、その視覚的な美しさに感銘を受け、「この作品はアニメーションがただの子供向けのエンターテインメントにとどまらず、より複雑なテーマを探求している」と述べています。

また、本作は2000年に公開された前日譚『ヨセフ物語 〜夢の力〜』や、後に舞台ミュージカル化されるなど、長年にわたって愛されています。ミュージカルは2020年にロンドンのウエストエンドで開幕し、高い評価を受けました。

評価においても、興行成績や批評家の反応は良好で、作品が持つメッセージ性や深みが称賛されています。そのため、アニメーション映画史において特別な地位を築いた作品と言えるでしょう。総じて、『プリンス・オブ・エジプト』は多くの人々に感動を与え続けている名作であり、今後もその影響を残していくことでしょう。

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