プリンス・R380

R380: 日本初のプロトタイプレーシングカー

R380は、プリンス自動車工業によって開発された日本初のプロトタイプレーシングカーで、「サン・パー・マル」としても知られています。この車は1964年の第2回日本グランプリに向けて開発され、当初はプリンス・スカイラインのエンジンをベースにしていましたが、後に改良が加えられました。

開発の背景

1964年、プリンス自工は本来は直列4気筒のスカイラインに代わって、SOHC直列6気筒の2Lエンジンを搭載したスカイラインGTを開発しました。このレースでスカイラインGTは2〜6位を獲得したものの、優勝はポルシェ・904に奪われました。そのため、優勝を目指すべく、桜井眞一郎を中心に純粋なレーシングカーであるR380の開発が始まりました。

R380の名は、レースを意味する「R」と、同社の38番目のプロジェクトを表す「380」とから成り立っています。1964年夏に開発計画がスタートし、1965年6月に初号車（R380-I）が完成。その後、1966年の日本グランプリで改良型であるR380A-Iが優勝を果たしました。

車両の特長

R380は[国際自動車連盟]のグループ6に属するプロトタイプスポーツカーであり、当時のレース規制に準拠した設計が施されています。目的はポルシェ・904を上回るパワーウェイトレシオの達成で、軽量な車体を持つミッドシップエンジンを搭載しています。

シャーシとサスペンション

R380-Iはイギリスから輸入したブラバム・BT8Aのパイプフレームを利用し、必要に応じて補強が施されました。その後、独自設計のシャーシに進化していきました。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン方式を使用し、燃料タンクはコックピット左右に配置され、設計上の安全性が考慮されています。

ボディデザイン

ボディは軽量なアルミ製であり、R380A-IではフロントカウルがFRP製に変更され、さらにR380A-IIでは全体がFRP製に進化しました。空力デザインは東京大学の風洞で実験され、改良が重ねられましたが、高速走行中にフロントが浮き上がる問題がありました。これに対応するため、ノーズやラジエターの形状が見直され、最終的には滑らかなデザインが完成しました。

エンジン性能

ミッドシップに搭載されるGR8型エンジンは、スカイラインGTのG7型エンジンをベースに開発された専用エンジンであり、新設計に近い仕様が盛り込まれています。基本のボア×ストロークを変更し、SOHCからDOHCに進化させることで吸排気効率を大幅に向上させました。結果、200 PSから公称255 PSの出力を達成しました。

レースと活動歴

R380は1966年から1970年まで様々なレース活動を行い、日本GPやオーストラリアのレースに参戦しました。特に1967年には筑波のテストコースで7つの世界速度記録を打ち立て、1970年には日本GP不参加を宣言し、プロトタイプレース活動を停止しました。最終レースは富士インター2000マイルとなりました。

復刻プロジェクト

1996年、桜井眞一郎が代表を務めるエス・アンド・エス エンジニアリングにより、R380A-Iの復刻車が製作されました。この復刻車は当時の設計図を基に製造され、多くのパーツが再使用されることとなりました。こうした復刻作業は、R380の歴史と技術を後世に引き継ぐ意義を持っています。

このように、R380は日本の自動車技術の進化を象徴する存在として、今なお多くのファンから愛され続けています。

もう一度検索