プレウローン (ギリシア神話)

プレウローン

プレウローン（古希: Πλευρών）は、古代ギリシアの神話に登場する重要な人物であり、特にアイトーリア地方の伝説において中心的な位置を占める英雄です。彼の名は「プレウロン」と短縮されて表記されることもあります。

血筋と家族構成

プレウローンは、アイトーリア地方を統治した王アイトーロスと、ニュムペーであるプロノエー（ポルボスの娘）との間に生まれました。兄弟としては、後に彼自身と同じく重要な都市カリュドーンの名祖となる人物がいます。彼はドーロス王の娘であるクサンティッペーと結婚し、多くの子宝に恵まれました。息子のアゲーノールは、後にプレウローンの血統を受け継ぐ重要な人物となります。また、ステロペー、ストラトニーケー、ラーオポンテーという三人の娘ももうけたと伝えられています。ただし、プレウローンの系譜については一部異説も存在し、カリュドーンやクーレースを彼の息子とする異なる伝承も語られています。

都市プレウローンの名祖

プレウローンの最も知られた伝説の一つは、アイトーリア地方に築かれた主要な都市であるプレウローン（現在の地理におけるenに相当）の名祖となったというものです。都市の名がその地域の英雄に由来することは、古代ギリシアにおいてはしばしば見られるパターンであり、これはプレウローンがその地域社会にとって、開祖や守護者のような根源的な重要性を持つ存在として認識されていたことを示唆しています。彼の子孫たちは、この地を中心に勢力を拡大し、アイトーリア地方の歴史を形作っていくことになります。

スパルタにおける崇敬

プレウローンに対する崇敬は、アイトーリア地方に留まらず、遠く離れたラコーニア地方の中心都市スパルタにも及んでいました。スパルタにおいては、特に勇敢な双子の英雄として名高いディオスクーロイ、すなわちカストールとポリュデウケースの祖先にあたる人物として、英雄祭祀の対象とされていました。パウサニアスの記録によれば、スパルタに存在したゼウス・エウアネモス（風を鎮める神としてのゼウス）の聖域の右手には、プレウローンの栄誉を称えるための英雄廟（ヘーローン）が建立されていたと伝えられています。この事実は、プレウローンが単なる地域的な英雄に留まらず、ギリシア世界の他のポリスにもその名声が伝わり、崇拝の対象となっていたことを物語っており、神話や英雄信仰が異なる地域間でどのように共有され、伝播していったかを示す興味深い例と言えます。

神話における位置づけのまとめ

プレウローンは、アイトーロスから始まるアイトーリア王家の系譜において不可欠な存在です。彼とその子孫を通じて、アイトーリア地方の伝説的な歴史が紡がれ、後のギリシア神話における重要な出来事や人物へと繋がっていきます。都市プレウローンの創設に関わる名祖としての役割、そしてスパルタにおける英雄崇拝の対象であったという事実は、彼の神話における影響力と重要性を示しています。彼は、単なる王族の一員ではなく、特定の地域社会のアイデンティティ形成や、広範囲における英雄信仰のネットワークに関わる、多面的なキャラクターであると言えるでしょう。

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