プレシェヴォ渓谷

プレシェヴォ渓谷：バルカン半島の要衝

プレシェヴォ渓谷は、セルビア本土の最南端に位置する地域であり、プレシェヴォ、メドヴェジャの2つの自治体が中心です。コソボとの国境に接し、バルカン半島の地政学的な要衝として、歴史的に重要な役割を果たしてきました。

地理

プレシェヴォ渓谷は、ゴリスカ・モラヴィツァ川によって形成された渓谷で、南モラヴァ川との合流点からプレシェヴォ付近の源泉までを指します。この渓谷は、バルカン半島を南北に貫く主要な交通路であり、北はゴリスカ・モラヴィツァ川、南モラヴァ川、大モラヴァ川を経てドナウ川へと続き、南はヴァルダル川を通じてマケドニア、ギリシャへと繋がっています。エーゲ海沿岸と中央ヨーロッパを結ぶこの経路は、バルカン半島の山々を縦断する重要なルートであり、コソボ紛争以降、プリシュティナを経由するルートが不安定になったことで、その重要性が一層高まりました。

住民構成

プレシェヴォ、ブヤノヴァツの両自治体では、アルバニア人が多数派を占めています。しかし、ブヤノヴァツにはセルビア人も一定数居住しており、民族構成は複雑です。主要な町としては、プレシェヴォ、ブヤノヴァツ、メドヴェジャが挙げられます。

歴史

プレシェヴォ渓谷危機（2001年）

コソボ紛争の余波を受け、2001年にはユーゴスラビア治安部隊とアルバニア人ゲリラ組織であるプレシェヴォ・メドヴェジャ・ブヤノヴァツ解放軍との間で武力衝突が発生しました。ゲリラの目的は、プレシェヴォ、ブヤノヴァツ、メドヴェジャの支配権を確立し、コソボやマケドニアのアルバニア人支配地域との統合を図ることにありました。紛争によって国境管理が緩み、ゲリラは南のマケドニアへと活動範囲を広げ、民族解放軍に合流してマケドニア政府との戦闘に加わりました。この紛争は、国際社会の仲介により、アルバニア人ゲリラの武装解除によって終結しました。

その後

2007年には、セルビア大統領がコソボで脱獄を試みたテロリストがマケドニアに潜伏し、プレシェヴォ渓谷で新たな紛争を起こそうと計画していると表明しました。しかし、これらのテロリストはマケドニア警察の作戦によって逮捕または死亡しました。

政治

プレシェヴォ渓谷のアルバニア人は、プレシェヴォ渓谷アルバニア人連合を通じて政治的な意思表示を行っており、2008年のセルビア議会選挙では1議席を獲得しています。

プレシェヴォ渓谷は、バルカン半島の安定を左右する重要な地域であり、その動向は常に国際社会の注目を集めています。民族間の緊張、経済的な問題など、解決すべき課題は多く、今後の平和と安定に向けた取り組みが求められています。

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