プレストンの戦い (1648年)

プレストンの戦い：第二次イングランド内戦の転換点

プレストンの戦いは、1648年8月17日から19日にかけて、イングランド北西部のランカシャー州プレストンで繰り広げられた、第二次イングランド内戦における重要な戦闘です。この戦いは、議会派と、王党派およびスコットランドからの援軍（エンゲージャーズ）との間で戦われました。

戦いの背景

第一次イングランド内戦は議会派の勝利で終わり、国王チャールズ1世は捕虜となりました。しかし、議会派内部では長老派と独立派の対立が激化し、さらにニューモデル軍でも平等派と独立派の分裂が生じ、深刻な混乱を招いていました。

この混乱に乗じて、チャールズ1世は1647年11月にワイト島へ逃亡し、スコットランド国民盟約（盟約派）と和解契約を結びました。この契約に基づき、スコットランドの有力貴族ハミルトン公爵ジェイムズ・ハミルトンはエンゲージャーズを結成し、チャールズ1世救出のためにイングランドへ南下を開始、第二次イングランド内戦が勃発しました。

危機的状況の中、議会派のオリバー・クロムウェルは、平等派の改革運動を鎮圧し軍の分裂を防ぎました。そして、チャールズ1世との断交を宣言し、王党派との対決へと進んでいきました。

イングランドでは、王党派とスコットランドの連携により各地で挙兵が起こり、議会派は戦力を分散せざるを得なくなりました。トーマス・フェアファクスとクロムウェルは、それぞれ南東部のケントと西部のウェールズに進軍し反乱を鎮圧しましたが、7月にハミルトン公がイングランドへ侵入したため、クロムウェルが代わりに北上することになりました。

プレストンの戦い

スコットランド軍は4月にベリックとカーライルを占領し、7月にはイングランド西部に侵入、8月中旬にはプレストンを占拠しました。イングランド王党派とアイルランド部隊も加わり、総勢2万人に達したスコットランド軍は、クロムウェル軍の約2倍の規模となり、戦況はスコットランド軍優位に見えました。

しかし、ハミルトン公は自軍を各地に分散させるという失策を犯します。主力部隊はプレストン市内に、別動隊は離れた場所に配置したため、兵力を十分に活用できなくなりました。この状況を好機と見たクロムウェルは、奇襲をかけて中央突破し、敵を南北に分断する作戦を実行しました。

8月17日早朝、クロムウェルは東からラングデイル隊を襲撃し、プレストンへ追い込みました。続いてハミルトン公の歩兵部隊も壊滅させ、プレストンを制圧しました。この作戦でスコットランド軍は分断され、ハミルトン公は南へ逃走しました。クロムウェルは翌18日にプレストンに守備隊を残し、ハミルトン公を追撃しました。19日にはウォリントン近郊で敵軍を捕捉し、白兵戦で1000人を討ち取り、200人を捕虜にしました。ハミルトン公はさらに逃走を続けましたが、6日後にランバートの騎兵隊に降伏しました。

戦後の影響

プレストンの戦いにおける大敗により、エンゲージャーズは壊滅しました。捕らえられたハミルトン公は翌1649年3月に処刑されました。残ったモンロー部隊はスコットランドへ撤退し、スコットランド王党派は失脚しました。代わって台頭した反王党派のアーガイル侯爵は、クロムウェルと和睦し、先に占領されていたベリックとカーライルの返還などを認めました。

しかし、イングランドでは長老派がチャールズ1世との和睦を画策し、クロムウェルら独立派との対立を深めました。クロムウェルは議会を見限り、12月6日にプライド大佐がクーデターを敢行し、長老派を議会から排除しました。その後、残った議員で構成された下院は、1649年1月30日にチャールズ1世を処刑し、イングランド共和国が樹立されました。

しかし、王党派は亡命したチャールズ王太子を擁立し抵抗を続け、スコットランドやアイルランドも王党派に復帰し、平等派も反乱を起こすなど、イングランドは政情不安が続く中で第三次イングランド内戦へと突入していくことになります。

参考文献

今井宏『クロムウェルとピューリタン革命』清水書院、1984年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
* 清水雅夫『王冠のないイギリス王 オリバー・クロムウェル―ピューリタン革命史』リーベル出版、2007年。

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