プレーローマ

プレーローマ（Pleroma）は、コイネー・ギリシア語で「 πλήρωμα 」と表記され、「満ち溢れるもの」や「完全なもの」といった意味を持ちます。この概念は、神学、特にグノーシス主義において、神の力の全て、つまり完全なる神性を指す用語として用いられます。

キリスト教神学におけるプレーローマ

キリスト教神学において、プレーローマは神の完全性や豊かさを表すために用いられます。特に、新約聖書のコロサイ人への手紙2章9節には、「なぜなら、キリストのうちに神性の満ち満ちたものが、形をとって宿っているからです」と記されており、ここで「満ち満ちたもの」としてプレーローマの概念が用いられていると解釈されています。この箇所は、キリストの中に神の完全性が宿っていることを強調しており、キリスト教の信仰における重要な教義の一つとなっています。

ただし、このコロサイ人への手紙の著者が伝統的にパウロとされてきた一方で、現代の研究者からはその信憑性が疑われることもあり、プレーローマの解釈についても様々な議論が存在します。

グノーシス主義におけるプレーローマ

グノーシス主義においては、プレーローマはより複雑な宇宙論的な概念として扱われます。グノーシス主義の神話体系では、プレーローマは至高の神が住まう光の領域であり、そこから様々な霊的な存在（アイオーン）が流出すると考えられています。これらのアイオーンは、神の属性や力を体現しており、宇宙の構造を形成しています。グノーシス主義におけるプレーローマは、物質世界とは対照的な、純粋で完全な霊的次元として位置づけられています。

プレーローマの概念は、グノーシス主義の複雑な神話や宇宙論を理解する上で不可欠な要素であり、彼らの神観や世界観を特徴づける重要な概念の一つと言えます。

新約聖書におけるプレーローマ

新約聖書では、「プレーローマ」という言葉は17回使用されています。その多くは、神の完全性やキリストの豊かさを表す文脈で用いられます。しかし、その具体的な意味や解釈は、文脈によって異なり、単一の定義に限定することは難しいとされています。

新約聖書におけるプレーローマの使用例としては、以下のようなものがあります。

神の完全性や豊かさを表す言葉として
キリストにおける神の満ち満ちた存在を表す言葉として
* 教会の完成や充満を表す言葉として

これらの使用例からわかるように、プレーローマは、神の力や存在、そしてその影響が及ぶ範囲までをも包括的に表現する概念として用いられていると言えます。

まとめ

プレーローマは、神の完全性を指す多義的な概念であり、キリスト教神学やグノーシス主義において重要な意味を持ちます。新約聖書にも登場しますが、その解釈は文脈によって異なり、多様な意味合いが含まれています。プレーローマの概念を理解することは、古代の宗教的、哲学的な思考を理解する上で重要な手がかりとなります。

プレーローマは、神の力の完全性、キリストの豊かさ、教会の完成、そしてグノーシス主義においては霊的な領域と、多岐にわたる意味合いを持つ言葉として、歴史の中でその重要性を保っています。

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