プロイセン貴族院

プロイセン貴族院：封建的議院の歴史と役割

プロイセン貴族院（ドイツ語: Preußisches Herrenhaus）は、プロイセン王国議会の上院であり、1848年から1918年まで存在しました。下院の衆議院が民選議院であったのに対し、貴族院は世襲議員と勅任議員で構成される非公選議院であり、その構成や権限は時代とともに変化しました。本記事では、貴族院の成立から廃止までの経緯、構成、役割、そして他国との比較を通して、その歴史的意義を解説します。

貴族院の創設と構成

第一院 (1848年-1854年)

1848年12月5日にプロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世が欽定憲法を制定し、二院制議会が発足しました。当初は、下院にあたる第二院議員が男子普通選挙で選出されるのに対し、上院にあたる第一院議員は男子高額納税者による互選で選出されるという違いがありました。しかし、1849年5月の緊急勅令と8月の議会承認により、第二院の選挙制度は納税額に応じた三等級選挙権制度に変更され、1850年1月31日の欽定憲法修正憲法によって第一院の構成も改正されました。改正後の第一院は、世襲議員、勅任議員、選挙議員という三重構造となりました。

具体的な構成は以下の通りです。

成年皇族議員
世襲議員
旧ライヒ直属諸侯だったが、陪臣化でプロイセンの貴族になった家系の家長
勅令により第一院所属権を付与された家系の家長
終身勅任議員
選挙議員
法律の定める選挙区の高額納税者によって選出された90人の議員
大都市の自治機関が選出した30人の議員

世襲議員と勅任議員の総数は選挙議員の総数（120名）を超えることができず、勅任議員は世襲議員総数の10分の1を超えないとされていました。そのため、国王が任命できる勅任議員はごく少数に限られていました。

貴族院 (1854年-1918年)

国王は勅任議員を少数しか選べないことに不満を持ち、イギリス貴族院のように世襲議員と勅任議員のみで上院を構成することを望んでいました。しかし、高額納税者選挙制度をユンカーの優越的地位を保証する制度として擁護する超保守派が国王の構想に反対しました。国王と超保守派の政治闘争が続きましたが、オットー・フォン・ビスマルクが国王側に寝返ったことで国王は1853年に憲法改正法の制定に成功し、第一院を世襲議員と勅任議員のみにすることに成功しました。そして1855年の法律によって第一院は「貴族院」と改称されました。

貴族院の構成は以下の通りです。

国王に任命された皇族議員
世襲議員
ホーエンツォレルン一族の家長
旧ライヒ直属諸侯だったが、陪臣化でプロイセンの貴族になった家系の家長
1847年の連合州議会の議員だった侯爵、伯爵、男爵
勅令により貴族院所属権を付与された家系の家長
終身勅任議員
4つの大宮廷職（Kanzler、Landhofmeister、Obermarschall、Oberburggraf）の保有者
国王に任命される者（軍高官、政府高官、実業家、慈善団体の長など）
推薦権を持つ者（一部の都市や大学、国教である福音主義の大聖堂など）から推薦された者

この制度の下では国王は自らの判断で無制限に勅任議員を任じることができ、1854年から1918年の間に325人に及ぶ勅任議員が任命されました。特に、大学教授の登用が特徴的であり、1854年から1918年の間に40人の大学教授が大学の推薦で、21人の教授が国王から直接議員に任命されました。

貴族院および貴族院議員の地位

立法権は国王と衆議院と貴族院の三者によって行使され、法案の成立には三者の一致が必要でした。両議院の召集・停会・閉会、衆議院の解散は国王の専権事項であり、両院の自律的集会権は認められていませんでした。貴族院議員には議員歳費は支給されませんでした。

貴族院の廃止

第一次世界大戦末期のドイツ革命により、プロイセンは共和政となり、1918年11月15日にプロイセン人民代表評議会によって貴族院は廃止されました。その後、プロイセン憲法制定議会の選挙と召集が行われ、1920年11月30日にプロイセン憲法が制定されました。同憲法により民選のプロイセン州議会が設置されるとともに、州議会に対する上院としてプロイセン州参議院が設置されましたが、この州参議院は貴族院と異なり、立法権を有していませんでした。

まとめ

プロイセン貴族院は、プロイセン王国の上院として、世襲議員と勅任議員で構成された非公選議院であり、プロイセンの立憲化を阻む存在として機能しました。しかし、他国の貴族院と比較して学者の登用が盛んであったという特徴も有していました。第一次世界大戦末期のドイツ革命によって廃止され、その役割を終えました。

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