プログレス1

プログレス1（Progress 1）

プログレス1は、ソビエト連邦（現ロシア）が開発した無人宇宙補給船「プログレス」シリーズの記念すべき初号機です。シリアル番号102が付与されたこの宇宙船は、1978年に軌道上の宇宙ステーション、サリュート6号への重要な物資輸送ミッションに使用されました。

開発とミッションの背景

1970年代、ソビエト連邦はサリュート計画を通じて宇宙ステーションの運用能力を高めていました。特にサリュート6号は、それまでのステーションとは異なり、複数のドッキングポートを備え、宇宙飛行士の長期滞在を可能とする設計がなされていました。長期にわたる有人宇宙活動を維持するためには、地上の基地から定期的に燃料、食料、水、空気、スペアパーツといった生命線となる物資を輸送する手段が不可欠となりました。この要請に応える形で開発されたのが、プログレス補給船シリーズです。プログレス1は、この新たな補給システムの有効性を実証する最初の機体として、極めて重要な役割を担いました。

打ち上げ

プログレス1は、グリニッジ標準時（GMT）1978年1月20日午前8時25分、現在のカザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の31/6番射点より、信頼性の高いソユーズ-Uロケットによって宇宙へと旅立ちました。ロケットは順調に飛行し、プログレス1を地球周回軌道へ正確に投入することに成功しました。

サリュート6号との結合、そして補給任務

軌道投入後、プログレス1はサリュート6号宇宙ステーションへ向けた自動操縦によるランデブー飛行を開始しました。高度な航法・誘導システムを駆使し、打ち上げから2日後の1月22日午前10時12分、プログレス1は軌道上で正確な位置に到達し、サリュート6号ステーションの後方ドッキングポートへの自動ドッキングに成功しました。

ドッキング後、ステーション滞在中の宇宙飛行士たちによって、プログレス1に搭載されていた推進剤や水、食料といった生活必需品、さらには各種実験装置やスペアパーツなどの機材がステーション内部へ運び込まれました。これらの物資は、ステーションのシステム維持やクルーの長期滞在活動にとって不可欠なものでした。また、補給任務と並行して、ステーション内で不要となった使用済み機器や廃棄物はプログレス1の内部空間に積み込まれ、後の大気圏再突入時にステーションの安全を確保する形で処分されることとなりました。

任務の完了と役割を終える時

搭載物資の移送と、ステーションからの使用済み機器や廃棄物の積み込みという主要な任務が完了した後、プログレス1は1978年2月6日にサリュート6号との結合を解除し、ステーションから離れました。ステーションから離れたプログレス1は、単独飛行を続けた後、2月8日には軌道から離脱するための最後の噴射が行われました。地球の大気圏に再突入した機体は、飛行経路が慎重に計算され、安全が確保された太平洋上空で分解、燃焼し、その歴史的な役割を静かに終えました。

無人補給船の先駆けとして

プログレス1の成功は、宇宙ステーションへの無人での定期的な物資補給という、その後の有人宇宙活動において極めて重要となる技術の確立を意味しました。この初号機の成功に基づき、プログレス補給船シリーズは改良が重ねられ、サリュート計画、ミール宇宙ステーション、そして現在の国際宇宙ステーション（ISS）に至るまで、ソ連およびロシアの宇宙ステーション運用の生命線を支える不可欠な存在として、長きにわたり活躍を続けることになります。プログレス1は、まさに現代の宇宙ステーション運用における無人補給ミッションの礎を築いた記念碑的な宇宙船と言えるでしょう。

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