プログレスM-16M

プログレスM-16M：宇宙輸送を変えた画期的な補給ミッション

「プログレスM-16M」（ロシア語では「Прогресс М-16М」）は、2012年にロシア連邦宇宙局が運用した無人の宇宙補給機です。この機体は国際宇宙ステーション（ISS）への物資輸送を担い、NASAやJAXAでは「プログレス48」あるいは「48P」といった名称でも識別されました。プログレス補給船の改良型（形式番号11F615A60）シリーズにおける16番目の機体にあたり、シリアル番号は416番が付与されています。ISSへ到達した宇宙機としては通算126機目、また2012年にロシアが軌道上に打ち上げた機体としては15番目となりました。このミッションに使用されたソユーズ-Uロケットは、その年におけるソユーズ系統の打ち上げとして7回目にあたります。

ミッションの運用と革新

プログレスM-16Mは、2012年8月1日19時35分13秒（協定世界時GMT）に、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地からソユーズ-Uロケットによって宇宙へと旅立ちました。打ち上げからおよそ10分後、ソユーズ-Uロケットは正常にプログレスM-16Mを所定の軌道へ投入し、ISSへの補給ミッションが本格的に開始されました。

このプログレスM-16Mミッションは、宇宙輸送における非常に重要な技術革新を実証しました。それが「急速ランデブー方式」の採用です。従来のプログレス補給船の飛行では、ISSへのドッキングまでに通常50時間以上の時間を要していましたが、プログレスM-16Mはこれを劇的に短縮。わずか軌道4周、約6時間という驚異的な速さでISSとのドッキングを成功させたのです。この方式は、特に生命科学に関連する緊急性の高い物資などを、より迅速にISSへ届けることを可能にしました。また、プログレス補給船による試験飛行でその信頼性が確認された後、同様の短時間ランデブー方式は、宇宙飛行士を輸送する有人のソユーズ宇宙船の飛行にも取り入れられることになります。これにより、クルーは打ち上げ後の軌道上で長時間待機する必要がなくなり、宇宙での作業を開始するまでの疲労を大幅に軽減できるようになりました。プログレスM-16Mは、まさにこの画期的な技術を世界で初めて実運用レベルで成功させた先駆的なミッションと言えるでしょう。

搭載された貨物

プログレスM-16Mは、ISSに滞在するクルーのために様々な物資を運びました。主な搭載貨物は以下の通りです。

ドライカーゴ: 合計1397kg。これには、宇宙での科学実験に用いる装置類、宇宙食、衣服、そしてクルーの健康維持や安全に不可欠な生命維持用品などが含まれていました。
燃料: 合計680kg。ISSの軌道維持や姿勢制御に使用される補充用の燃料と、特にロシアのサービスモジュールに搭載された制御スラスタ用の燃料が輸送されました。
水: 合計420kg。宇宙ステーションでの生活に不可欠な飲料水やその他の用途に利用される水が運ばれました。
気体: 合計47kg。主にクルーが呼吸するための酸素などが供給されました。

ミッションの終焉

ISSでの補給任務を終えたプログレスM-16Mは、2013年2月9日13時15分27秒（協定世界時GMT）に、ISSのロシア側モジュールであるピアース（Pirs）から予定通りドッキングを解除しました。その後、安全な軌道へと移動し、制御下で地球の大気圏へ再突入。その燃え残りは太平洋上の予定された海域に落下し、プログレスM-16Mのミッションは完了しました。

プログレスM-16Mは、ISSへの重要な補給を果たしただけでなく、急速ランデブー方式という革新的な技術を確立し、今後の宇宙輸送、特に有人宇宙飛行の運用効率向上に大きく貢献した歴史的なミッションでした。

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