プログレスM-21M

プログレスM-21Mは、ロシア連邦宇宙局が開発、運用した無人の宇宙補給機です。国際宇宙ステーション（ISS）へ定期的に物資を輸送するプログレス補給船シリーズの一機として、重要な役割を担いました。特に、新型ドッキングシステムの検証を主任務の一つとしていました。この機体は、協力機関であるNASAやJAXAからはプログレス53、あるいは53Pという名称でも参照されています。

打ち上げと最初の接続

プログレスM-21Mの宇宙への旅は、2013年11月25日、協定世界時（UTC）の20時53分6秒に始まりました。打ち上げ場所は、カザフスタン共和国に位置する歴史あるバイコヌール宇宙基地です。機体は、ロシアの信頼性の高いソユーズ-Uロケットによって、正確に所定の軌道へと投入されました。地球を周回する軌道に乗った後、プログレスM-21MはISSへの接近を開始。2013年11月29日の22時30分20秒（UTC）には、ISSのロシア側を構成する主要モジュールの一つであるズヴェズダへのドッキングに無事成功し、ISSとの接続を確立しました。

運用中の特記事項

ISSとのドッキング運用中、プログレスM-21Mはいくつかの重要な任務を遂行しました。到着前の2013年11月28日には、ISSへの近接時に新型のクルス-NAドッキングシステムの初期試験が実施されました。また、プログレスM-21MはISSの軌道維持にも貢献しています。2014年2月13日には、搭載されたスラスターを用いて軌道変更を実施。およそ10分間にわたるエンジンの噴射により、ISSの軌道高度を約2キロメートル上昇させ、空気抵抗による自然落下を補償しました。

このミッションで最も特徴的だったのは、クルス-NAシステムのさらなる徹底的な試験です。2013年11月の最初の試験で確認された点を踏まえ、2014年4月に改めて大規模な検証が行われました。この試験のため、プログレスM-21Mは2014年4月23日の8時58分（UTC）に、接続していたズヴェズダモジュールから一旦ドッキングを解除しました。その後、ISSの近くを2日間にわたって自由飛行し、様々な条件下でのシステムの挙動が観測されました。そして、2014年4月25日の12時13分（UTC）に、再びズヴェズダの同じドッキングポートへの自動誘導と再ドッキングに成功しました。この一連の複雑な手順は、将来の宇宙船がより高精度な自動ドッキングを行うための重要なデータを提供しました。

搭載された物資

プログレスM-21Mは、ISSで活動する宇宙飛行士たちの生命線となる多様な物資を輸送しました。搭載された貨物には、宇宙船やISSの運用に不可欠な燃料や水、修理やメンテナンスに使用する補修機材が含まれていました。さらに、宇宙環境を利用した様々な科学実験に用いる機器や材料、ISSでの長期滞在を支える食料品、そしてクルーが宇宙での生活を送る上で必要となる個人用品なども積み込まれていました。これらの貨物の総重量は2398キログラムに達し、ISSでの活動を強力に支援しました。

ミッションの完了

ISSでの全ての任務を終えたプログレスM-21Mは、地球への帰還準備に入りました。2014年6月9日の13時29分（UTC）に、ズヴェズダモジュールから最終的にドッキングを解除し、ISSから離れました。その後、地球の大気圏へ再突入するための最終的な軌道離脱マヌーバが実行され、同日の17時23分には計画通りに大気圏に再突入しました。大気圏突入時に発生する高熱により機体は燃え尽き、その残骸の大部分は地表に落下することなく消滅し、プログレスM-21Mのミッションは完了しました。

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