プログレスM-23M

プログレスM-23M (Прогресс М-23М) は、ロシア連邦宇宙局 (Roscosmos) が開発・運用した無人宇宙補給機であり、国際宇宙ステーション (ISS) への重要な物資輸送ミッションを担いました。プログレス補給船は、ISS計画においてロシアが提供する主要な輸送手段の一つであり、その中でもM-23Mは、改良型であるプログレス-Mシリーズ (設計番号11F615A60) の23番目の機体として位置づけられています。シリアル番号は427が付与されていました。この補給船は、ISSに滞在するクルーが必要とする食料、水、空気、衣類といった生活必需品から、科学実験用の機材、軌道制御用の推進剤、船内のシステム維持に必要なスペアパーツなど、多岐にわたる物資を届けることを目的としています。NASAや日本の宇宙航空研究開発機構 (JAXA) といったISS計画のパートナー機関からは、便宜上「プログレス55」あるいは略して「55P」とも呼ばれていました。

プログレスM-23Mの打ち上げは、カザフスタン共和国にあるロシアの主要な宇宙港、バイコヌール宇宙基地から実施されました。2014年4月9日、グリニッジ標準時 (GMT) 15時26分に、ロシアの信頼性の高い打ち上げロケットであるソユーズUロケットによって打ち上げられました。ロケットは順調に飛行し、補給船は予定された地球低軌道へと正確に投入されました。

このミッションの特筆すべき点は、当時普及しつつあった迅速なランデブー技術、「6時間ランデブー方式」を採用したことです。これは、打ち上げからISSへのドッキングまでを、従来数日かかっていた時間を大幅に短縮し、わずか約6時間で完了させる高速アプローチ方法です。プログレスM-23Mは、打ち上げから正確に6時間後の2014年4月9日GMT 21時14分に、ISSのロシア側区画にあるドッキングポートの一つ、ピアース (Pirs) モジュールに自動操縦で成功裏にドッキングしました。これにより、ISSへの新鮮な物資供給が速やかに開始されました。

プログレスM-23Mは、ドッキング後、3ヶ月以上にわたり国際宇宙ステーションと結合した状態を維持しました。この期間中、ISSの乗員は補給船に搭載された貨物を取り出し、船内の倉庫として利用しました。また、役目を終えた実験機器や不要になったゴミなどをプログレス補給船の内部に詰め込みました。

約3ヶ月半にわたるISSとの結合期間を経て、プログレスM-23Mは2014年7月21日にISSのピアースモジュールからドッキングを解除し、ISSから離れました。通常、補給船は分離後速やかに廃棄される軌道に乗りますが、プログレスM-23Mはこの後、特別なミッションを遂行しました。「レーダープログレス実験」と呼ばれる、地球の大気などをレーダーで観測する科学実験に利用されたのです。数日間の実験運用を終えた後、補給船はその全ての任務を完了しました。

科学実験ミッション完了後、プログレスM-23Mは制御された軌道離脱プロセスへと移行しました。2014年7月31日、地上からのコマンドによりエンジンを噴射し、地球大気圏への再突入コースに乗りました。高速で大気圏に突入した機体は、断熱圧縮による激しい空力加熱によってその大部分が燃え尽き、宇宙ゴミとならないよう配慮されました。燃え残った可能性のあるわずかな破片は、船舶や航空機の航行に影響を与えないよう、南太平洋上の「宇宙船の墓場」とも呼ばれる、広く隔離された海域に落下する軌道が計算されており、安全に処分が完了しました。

プログレスM-23MがこのミッションでISSへ運んだ貨物の総重量は、2383キログラムでした。これは、ISSの長期滞在ミッションを継続するために不可欠な量の物資です。

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