プログレスM-24M

プログレスM-24M（ロシア語: Прогресс М-24М）は、国際宇宙ステーション（ISS）へ必要不可欠な物資を輸送するためにロシア連邦宇宙局（Roscosmos）が運用した無人の宇宙補給船です。プログレス補給船は、旧ソ連時代から続く信頼性の高い宇宙輸送システムであり、ISSの運用維持にとって生命線ともいえる役割を担っています。M-24Mは、このプログレス系列の中でも、近代化された改良型である「プログレス-M」タイプ（正式には11F615A60型）の通算24機目として製造され、シリアル番号423番を与えられました。国際的な宇宙協力体制の下、NASAやJAXAなどのパートナー機関では、この機体を識別するため「プログレス56」または略して「56P」という名称も使用されています。

打ち上げとISSへの迅速な到達

この補給ミッションは、ISSで活動する第40次長期滞在クルーを支援するために計画されました。プログレスM-24Mは、2014年7月23日、協定世界時（GMT）の午後9時44分に、中央アジアの広大なステップ地帯に位置するカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。打ち上げには、長年にわたり多くの人工衛星や宇宙船を軌道に送り出してきた実績を持つ、ロシアの代表的な使い捨てロケットであるソユーズ-Uが使用されました。強力な推進力によって地球の重力圏を脱したプログレスM-24Mは、目標軌道に乗った後、ISSへの接近軌道へと移行しました。

特筆すべきは、ISSへのランデブー方式として「6時間ランデブー」が採用された点です。これは、従来の約2日（34周回）かけてISSに接近する方法に比べて、打ち上げからわずか数時間でドッキングを完了させる高速な手法です。この方式により、宇宙飛行士はより早く新鮮な物資を受け取ることが可能となり、また、補給船の軌道上での運用期間を短縮できるといった利点があります。プログレスM-24Mは、この計画通り、打ち上げから6時間を大きく下回る時間でISSに到達し、ISSのロシア側にある「ピアース」モジュールへ正確にドッキングを完了しました。

搭載された重要貨物

プログレスM-24MがISSへ輸送した貨物は、ISSの維持運用と宇宙飛行士の生活にとって極めて重要なものでした。搭載された物資の総量は、燃料や酸化剤を含む推進薬、生命維持に不可欠な水、そして宇宙飛行士の日々の食料や生活用品など、多岐にわたり、その総重量は2322kgに達しました。これらの物資は、ISSの姿勢制御や軌道維持、船内の環境維持、そしてクルーの健康と士気を保つために不可欠でした。

ISSでの運用とミッションの終了

ISSにドッキングしている間、プログレスM-24Mは補給船として機能し、搭載されていた貨物はISS船内へと運び込まれました。また、ISSから排出される不用品や実験廃棄物などがプログレス船内に積み込まれ、大気圏再突入時に共に処分される準備が進められました。約3ヶ月間にわたりISSと結合していたプログレスM-24Mは、主要な補給任務を終え、2014年10月27日にISSから無事分離しました。

ISS分離後、プログレスM-24Mはすぐに大気圏へ突入せず、短期間ながら独立した飛行を行いました。この飛行期間を利用して、ロシアの宇宙計画における科学実験の一つである「Отражение」（オトラジェーニエ）実験が実施されました。この実験は、宇宙機が地球大気圏に突入する際に発生する現象や、その際に通過する大気の光信号の透過性に関する詳細なデータを取得することを目的としていました。このようなデータは、将来の宇宙機の設計や大気圏突入技術の開発に役立てられると考えられます。

ミッション完了と廃棄

Отражение実験を含む全てのミッションを完了したプログレスM-24Mは、最終段階である軌道離脱プロセスへ移行しました。使用済みの機体を安全に処分するため、2014年11月19日に地球大気圏へと再突入しました。大気との激しい摩擦熱によって機体の大部分は燃え尽きましたが、燃え残った破片が地表に到達することを防ぐため、事前に航行する船舶や航空機がいないことが確認された南太平洋上の広大な海域へと誘導され、制御された落下によりミッションを完全に終了しました。プログレスM-24Mは、ISSへの重要な補給任務と、それに続く科学実験という二重の目的を達成し、ロシアの宇宙輸送技術の信頼性を示す一例となりました。

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