プログレスM-26M

プログレスM-26M

プログレスM-26Mは、ロシア連邦宇宙局（ロスコスモス）によって開発・運用された無人宇宙補給船です。国際宇宙ステーション（ISS）への重要な物資輸送ミッションを遂行するため、2015年に打ち上げられました。プログレス補給船の改良型であるプログレス-Mシリーズの26番目の機体にあたり、シリアル番号は425です。国際的なパートナーであるNASAやJAXAなどからは、補給ミッションを示す識別子として「プログレス58」あるいは「58P」といった名称でも参照されました。その主な任務は、ISSに滞在する宇宙飛行士が必要とする食料、水、空気、燃料、機材などを届けることでした。

打ち上げとISSへのランデブー

本機は、グリニッジ標準時（GMT）2015年2月17日午前11時0分、カザフスタン共和国に位置するバイコヌール宇宙基地から、信頼性の高いソユーズ-Uロケットに搭載されて宇宙へと旅立ちました。特筆すべきはその迅速なISSへの到達能力です。従来の補給船がISSへのドッキングまでに数日を要していたのに対し、プログレスM-26Mは「6時間ランデブー方式」と呼ばれる短時間でのアプローチを採用しました。これにより、打ち上げからわずか約6時間後の同日GMT午後4時57分には、国際宇宙ステーションのロシア区画であるズヴェズダ・サービスモジュールの後方ポートへ無事に自動ドッキングを成功させました。これは、ISSへの迅速な物資供給を可能にする重要な技術的進歩を示すものでした。

搭載貨物

プログレスM-26Mは、ISSに滞在する宇宙飛行士の生活と活動を支えるため、総計2370キログラムにも及ぶ多岐にわたる貨物と補給品を搭載していました。これらの物資は、当時ISSで活動していた第42次長期滞在クルーの6名に届けられました。搭載されていた貨物の主な内訳は以下の通りです。

燃料: 435kg - ISSの軌道維持や姿勢制御に必要な推進剤。
気体: 50kg - 主に宇宙飛行士の呼吸に必要な酸素など。
水: 420kg - 飲料水や衛生目的で使用される水。
予備部品、補給品、実験機材など: 1465kg - 船内の維持・修理に必要な部品、日々の生活物資、様々な科学実験を行うための装置や材料。

これらの物資は、ISSにおける科学研究の継続、船内環境の維持、そして長期滞在クルーの健康と安全を確保するために不可欠なものでした。

ISSでの運用と特記事項

ISSにドッキングしている間、プログレスM-26Mは単なる物資倉庫としての役割を超えて、いくつかの重要な任務を遂行しました。運び込んだ貨物は宇宙飛行士によって慎重に船内へと移送され、その代わりにISSで発生した不要になった機材や日々の生活で出る廃棄物が、帰還用のコンテナに詰められて本機に積み込まれました。これにより、ISS船内の清掃と整理が効率的に行われました。

特に重要な運用として、2015年5月にはISSの軌道高度を調整する「リブースト」ミッションが計画されました。ISSは微細な大気抵抗によって徐々に軌道が低下するため、定期的なリブーストが必要となります。プログレスM-26Mに搭載されたエンジンを使用してこの操作が行われる予定でしたが、最初の試みで技術的な問題が発生しました。エンジンの燃焼開始からわずか1秒後に、機体自身が異常を検知して推進システムを自動停止させてしまったのです。ロシアのフライトコントローラーはこの原因について、プログレスが持つ8基の姿勢制御スラスタのうちの1基に問題があった可能性を指摘しました。

このトラブルの後、問題が確認された1基のスラスタを除く残りの7基を使用して、2度目のリブースト試みが実施されました。この2回目の試みは無事に成功し、プログレスM-26Mは正確に32分3秒間にわたってエンジンを噴射し、国際宇宙ステーションの軌道を計画通りに上昇させることに貢献しました。

最終処分

プログレスM-26Mは、ISSのズヴェズダ・サービスモジュール後方ポートに約6ヶ月間係留されました。この間に全ての物資輸送と廃棄物収容の任務を終え、最終的な役割を果たす時を迎えました。2015年8月14日、本機は国際宇宙ステーションからドッキングを解除されました。その後、安全に軌道を離脱するための最終マヌーバを実行し、地球の大気圏に再突入しました。ほとんどの機体は大気との摩擦熱によって燃え尽き、残ったわずかな破片も事前に指定されていた南太平洋上の安全な海域（「宇宙船の墓場」と呼ばれるエリア）に落下することで、地上への危険を伴うことなく処分されました。プログレスM-26Mは、ISSへの貢献を終え、そのミッションを完了しました。

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