プログレスM-4

プログレスM-4は、ソビエト連邦が開発・運用した無人補給船プログレスシリーズの一機であり、特に改良型のプログレス-M（形式名11F615A55、シリアル番号204）に分類されます。この宇宙船は、1990年に、当時地球周回軌道上で運用中だった宇宙ステーション「ミール」へ、搭乗員が必要とする様々な物資を届けるという重要な任務を担いました。これは、ミールへ物資を輸送したプログレス補給船としては、通算22回目にあたるミッションでした。

プログレスM-4に搭載された貨物は多岐にわたりました。ミールEO-7ミッションとしてステーションに長期滞在している乗組員たちが、日々の生活を送るために不可欠な食料、飲料水、そして生命維持に必要となる酸素ガスが積まれました。また、宇宙空間という特殊な環境下で行われる多岐にわたる科学研究活動に使用されるための様々な装置類も搭載されました。加えて、宇宙ステーション全体の安定した軌道を維持したり、必要に応じて高度や軌道面を変更したりするために使用される推進剤、すなわち燃料も大量に運ばれました。

この重要な補給ミッションのために、プログレスM-4は1990年8月15日の世界標準時（GMT）4時0分41秒に打ち上げられました。打ち上げ場所は、現在のカザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の1番/5番発射台です。推進ロケットには、ソビエト連邦が開発・運用した信頼性の高いソユーズ-U2が使用されました。

地球周回軌道に乗ったプログレスM-4は、宇宙空間を飛行し、ミール宇宙ステーションへのランデブー接近を行いました。そして、打ち上げから約2日後の1990年8月17日、世界標準時5時26分13秒に、ミール・コアモジュールの前方にあるドッキングポートへの自動結合に成功しました。プログレスM-4がミールにドッキングしている期間中、宇宙ステーション「ミール」は、地球表面からおおよそ368kmから403kmの範囲の高度を周回しており、その軌道傾斜角は約51.6度でした。これは、当時のミールの標準的な運用軌道高度および角度でした。

プログレスM-4は、約1ヶ月間にわたりミール宇宙ステーションに結合された状態で、搭載していた食料や燃料、その他の物資をステーション内部へ移送する作業が行われました。これらの物資は、長期滞在する乗組員の生活を支え、ステーションの機能を維持するために極めて重要でした。また、一部のプログレス補給船は、自らの搭載燃料とスラスタを用いてミールの軌道修正（リブースト）を行う役割も担っており、プログレスM-4もステーションの軌道維持に貢献した可能性があります。

ミール宇宙ステーションでの補給任務を完了したプログレスM-4は、次の段階へと移行しました。1990年9月17日の世界標準時12時42分43秒に、ミールからのドッキングを解除し、ステーションから離脱しました。

ステーションから離脱したプログレスM-4は、使用済みの宇宙機を安全に処分するために、地球の大気圏に再突入させる軌道へと移行する準備を進めました。そして、ドッキング解除から3日後の1990年9月20日に、制御された大気圏再突入が実行されました。軌道離脱を開始するための逆噴射は、世界標準時11時4分27秒に開始されました。

大気圏に突入したプログレスM-4は、高速で大気を通過する際に発生する極度の摩擦熱によって加熱され、その機体の大部分が燃え尽き、消滅しました。これは、宇宙空間に残されたデブリを増やさないための一般的な処分方法です。燃え尽きずに残った機体の一部（耐熱性の高い部品など）は、あらかじめ設定された落下エリアである太平洋上の国際的な海域に落下したとされています。燃え残りの落下が完了したとされる時刻は、世界標準時11時42分49秒頃と記録されています。

このように、プログレスM-4は、1990年夏におけるミール宇宙ステーションの運用を支える重要な役割を果たし、無事にそのミッションを完了しました。これは、当時のソビエト連邦が進めていた、有人宇宙活動を継続的に支援するための無人輸送システムの有効性を示す事例の一つです。

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