プログレスM-60

プログレスM-60（Progress M-60）

プログレスM-60は、国際宇宙ステーション（ISS）への物資輸送を担ったロシアの無人宇宙補給船です。この種の宇宙機は、ISSに滞在する宇宙飛行士の生活を支え、ステーションの維持・運用に必要な物資を定期的に届ける重要な役割を果たします。

本機体は、プログレス補給船の改良型であるProgress-Mシリーズのバージョン11F615A55にあたり、製造番号は360番目の機体です。アメリカ航空宇宙局（NASA）では、国際宇宙ステーションへの各補給ミッションに固有の呼称を与えており、このフライトはプログレス25（Progress 25、略称: 25P）として記録されています。

飛行の概要

プログレスM-60の打ち上げは、グリニッジ標準時（GMT）2007年5月12日午前3時25分36秒に実施されました。場所は、カザフスタン共和国にあるロシアの主要な宇宙施設、バイコヌール宇宙基地の1/5発射台です。このミッションには、信頼性が高く実績のあるソユーズ-Uロケットが使用されました。

打ち上げ後、プログレスM-60はISSへの軌道に乗りました。約3日間の自動航行を経て、2007年5月15日午前5時10分（GMT）、国際宇宙ステーションのロシアセグメントを構成するサービスモジュール「ズヴェズダ」へ自動ドッキングを成功させました。

ドッキング後、プログレスM-60内部に格納されていた物資がISSに移送されました。このミッションで運び込まれた物資は合計2,324キログラムに及びます。これには、ステーションの姿勢制御や軌道維持に不可欠な推進薬、クルーの生命を支える食料や飲料水、呼吸に必要な酸素、そして宇宙空間での様々な科学実験や研究活動に使用される機材などが含まれていました。これらの物資は、ISSの安定的かつ継続的な運用にとって不可欠なものでした。

プログレスM-60は、補給船および一時的な廃棄物収容船として、約4ヶ月間にわたりISSに結合したまま滞在しました。この期間、ステーションの内部空間の一部としても利用されました。

ISSでの補給任務を終えたプログレスM-60は、2007年9月19日午前0時36分（GMT）にズヴェズダモジュールからドッキングを解除し、分離しました。多くの補給船はドッキング解除後すぐに廃棄されますが、プログレスM-60はこの分離後、約一週間にわたり独立した飛行を続けました。

この分離後の期間中、プログレスM-60は「プラズマ・プログレス計画」と呼ばれる技術実験プログラムの一部として利用されました。この計画は、宇宙環境を利用した様々な技術的な検証や研究を目的としており、将来の宇宙機の設計や運用技術の向上に貢献するためのデータ収集が行われたと考えられます。

技術実験を終えたプログレスM-60のミッションは最終段階を迎えました。2007年9月25日午前9時1分（GMT）に、機体を地球周回軌道から離脱させるための制御されたマヌーバが実行されました。

軌道離脱後、プログレスM-60は太平洋上空で地球大気圏へ再突入しました。大気との高速摩擦により機体の大部分は高温で燃え尽きましたが、完全に燃え尽きずに残った一部の比較的頑丈な構造物は、同日のおよそ午後7時47分（GMT）頃、国際的な取り決めに基づき、船舶や航空機の航行が少ない広大な南太平洋の予定された海域に安全に落下しました。このように使用済みとなった宇宙機を計画的に大気圏へ再突入させて処分することは、宇宙空間の利用を持続可能にし、地上へのリスクを最小限に抑えるための標準的な手順です。

プログレスM-60は、ISSへの重要な補給任務とそれに続く技術実験を成功裏に遂行し、その役割を終えました。ロシアのプログレス補給船シリーズは、国際宇宙ステーションの運営を支える上で引き続き不可欠な存在です。

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