プログレスM-61

プログレスM-61：国際宇宙ステーションを支えた無人補給船

プログレスM-61は、ロシア連邦宇宙局によって開発・運用された、国際宇宙ステーション（ISS）への物資輸送を担う無人宇宙補給船の一機です。この機体は、プログレスMシリーズのProgress-M 11F615A55バージョンに属し、シリアル番号は361でした。NASAでは、ISSへの補給ミッションの通し番号として、「プログレス26（Progress 26）」、略称「26P」とも呼ばれています。プログレス補給船は、ISSの維持・運用に不可欠な、推進薬や食料、水、実験機器などを定期的に送り届ける重要な役割を担っています。

打ち上げとその軌道投入

プログレスM-61の宇宙への旅は、2007年8月2日のグリニッジ標準時（GMT）17時33分47秒に始まりました。打ち上げ場所は、カザフスタン共和国にある歴史的なバイコヌール宇宙基地の1番射点（ガガーリン発射台としても知られる）です。信頼性の高いロシアのソユーズ-Uロケットがこの補給船を搭載し、宇宙空間へと正確に送り届けました。ソユーズロケットファミリーは、長年にわたり多くの宇宙機、特にプログレス補給船やソユーズ宇宙船の打ち上げに使用されてきた実績を持ちます。

ISSへの結合と滞在

打ち上げ後、M-61は自動航行システムを用いてISSへと接近しました。そして、2007年8月5日のGMT 18時40分に、ISSのロシア区画に位置するピアースモジュールに無事ドッキング（結合）を完了しました。ドッキングは宇宙ステーションの運用において極めて重要な技術であり、物資の受け渡しや推進薬の補給を可能にします。プログレスM-61は、この結合状態でおよそ5ヶ月間にわたりISSに滞在しました。その役割を終え、ISSからドッキングを解除したのは、2007年12月22日3時59分（GMT）のことでした。

届けられた生命線と研究資材

プログレスM-61がISSに届けた物資は、その総量が2,318kgにも達しました。これらの物資は、ISSに長期滞在する宇宙飛行士たちの生命と活動を支える上で不可欠なものばかりです。具体的には、ISSの軌道修正や高度維持に必要な推進薬、飲み水や実験用水、宇宙での生活を維持するための食料、そして呼吸に必要な酸素ガスが含まれていました。さらに、宇宙環境での様々な科学研究や実験に必要な器具や材料なども輸送され、ISSにおける科学的知見の蓄積に貢献しました。

最後の任務：技術実験

ISSからドッキングを解除された後、プログレスM-61のミッションはすぐに終了したわけではありませんでした。軌道離脱に先立つ約1ヶ月間、この機体は「プラズマ・プログレス計画」と呼ばれる一連の技術実験に活用されました。これは、宇宙空間に存在するプラズマ環境が宇宙機に与える影響などを研究するための重要な機会となりました。運用終了が近づいた補給船を有効活用することで、宇宙技術や科学に関する貴重なデータが収集されました。

ミッションの終焉

プラズマ・プログレス計画での実験を終えたプログレスM-61は、その最終段階へと移行しました。2008年1月22日19時6分（GMT）に、軌道を離脱するための最後の噴射が行われました。地球の大気圏に突入した機体は、高速での飛行によって生じる激しい空気抵抗と摩擦熱により、その大部分が燃焼し分解しました。これは、軌道上デブリとならずに安全にミッションを終了させるための標準的な方法です。燃え尽きずに残ったごく一部の破片は、事前に計算され、船舶などの航行がない太平洋上の安全な海域に、同日19時51分頃（GMT）に着水したとされています。

プログレスM-61のミッションは、ISSへの安定した補給を実現し、滞在クルーの活動を支えるとともに、科学技術の発展にも貢献する成功裏の飛行でした。

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