プログレスM-62

プログレスM-62とは

プログレスM-62（Progress M-62）は、国際宇宙ステーション（ISS）への重要な物資輸送を担うために開発された、ロシア連邦宇宙局（roscosmos）の無人宇宙補給船です。この機体は、プログレス補給船シリーズの中でも、Progress-Mタイプのバージョン11F615A55として製造され、シリアル番号は362が付与されていました。国際協力プロジェクトであるISSにおいては、参加各国で共通認識を持つため、アメリカ航空宇宙局（NASA）からは「プログレス27（Progress 27）」、略して「27P」という名称で呼ばれていました。

飛行の軌跡

プログレスM-62のミッションは、グリニッジ標準時（GMT）の2007年12月23日7時12分41秒に始まりました。打ち上げ地点は、カザフスタン共和国内にある広大な宇宙港、バイコヌール宇宙基地の1番射点です。推進力として使用されたのは、長年にわたり数多くの宇宙機を軌道へと送り出してきた実績を持つ、ソユーズ-Uロケットでした。

打ち上げからわずか3日後、プログレスM-62は目的地上空に到達。2007年12月26日8時14分、ISSのロシア側セグメントの一部であるモジュール「ピアース」への自動ドッキングを成功させました。これにより、ISS長期滞在クルーのもとへ、待ち望まれた物資が届けられる体制が整いました。

ISSへの重要な補給

プログレスM-62がISSへ届けた物資の総量は、合計で2,246kgに及びました。これは、宇宙ステーションの継続的な運用と、そこで生活・活動する宇宙飛行士たちの生存に不可欠なもので構成されていました。

具体的な内訳は以下の通りです。

推進剤: 862kg - ISSの軌道維持や姿勢制御に必須であり、大気抵抗による高度低下を防ぐために定期的な噴射が必要です。
酸素: 46kg - 宇宙飛行士が呼吸するための生命維持に直結するガスです。
ドライカーゴ: 1,325kg - 食料品、飲料水、実験に用いる機器やサンプル、個人用の衣服や衛生用品、ISSの機器を修理・維持するためのスペアパーツなど、多岐にわたる生活物資や運用資材が含まれていました。

これらの物資が滞りなく届けられることは、閉鎖された環境である宇宙ステーションにおいて、クルーの健康維持、士気の向上、そして科学ミッションの遂行にとって極めて重要です。

ドッキング解除後の科学実験と最後の任務

プログレスM-62は、ISSとドッキングした状態で約40日間にわたり、補給船としての役割を果たしました。その後、2008年2月4日10時32分にISSからのドッキングを解除し、単独での飛行へと移行しました。

ISSを離れた後も、プログレスM-62のミッションは続きました。約10日間にわたり、「Plasma-Progress」と呼ばれる独自の科学実験が実施されたのです。この実験では、プログレス補給船のスラスタを意図的に噴射し、それによって地球の電離層に生じる変化を、地上のレーダー観測などを用いて詳細に調査しました。これは、将来の宇宙機の運用が地球周辺の宇宙環境にどのような影響を与えるかを理解するための重要なデータ収集でした。

Plasma-Progress実験が無事終了し、プログレスM-62は全ての予定された任務を完了しました。そして、その役目を終える時が来ました。2008年2月15日9時44分、機体を軌道から離脱させるための最後の噴射が行われ、地球の大気圏へと突入しました。超高速で大気と衝突することで発生する断熱圧縮により、機体の大部分は激しく燃焼し、消滅しました。

しかし、熱や衝撃に耐え、完全に燃え尽きなかった一部の頑丈な構造体は、そのまま地表へと落下します。これらの残骸は、グリニッジ標準時のおよそ13時29分頃、事前に計算され、船舶の航行や航空路に影響がないよう安全が確認された、太平洋上の特定の海域に着水しました。こうして、プログレスM-62は一連のミッションを無事に終え、大気圏再突入と海上落下をもってその生涯を閉じました。

関連項目

プログレス補給船の飛行一覧
国際宇宙ステーションへの無人宇宙飛行の一覧

参考文献／外部リンク

国際宇宙ステーションへの補給フライト 27P（宇宙航空研究開発機構 JAXA）

※本記事は公開情報を基に記述しており、最新の情報や詳細については、公式情報源をご確認ください。

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