プログレスM-63

プログレスM-63

プログレスM-63は、ロシア連邦宇宙局が運用する無人宇宙補給機であるプログレス補給船シリーズの一隻です。この機体は、国際宇宙ステーション（ISS）に物資を届け、その運用を支援するために特別に設計されました。ロシア国内での正式な識別番号はProgress-M 11F615A55、シリアル番号は363番にあたります。また、国際的な宇宙協力の枠組みにおいては、米国航空宇宙局（NASA）によってプログレス28（Progress 28）、略して28Pという名称でも呼ばれています。

このプログレスM-63の打ち上げは、2008年2月5日に行われました。グリニッジ標準時（GMT）で13時2分に、中央アジアに位置するカザフスタンのバイコヌール宇宙基地にある1/5射点から、信頼性の高いソユーズ-Uロケットに搭載されて宇宙へと旅立ちました。

打ち上げ成功後、プログレスM-63は軌道上での飛行を続け、目標である国際宇宙ステーションへと接近しました。打ち上げから2日後の2008年2月7日14時38分（GMT）には、無事にISSのロシアモジュールの一つであるピアース（Pirs）ドッキング室に結合することに成功しました。ISSへのドッキング作業においては、通常、ロシアが開発したクルス自動ドッキングシステムが使用されます。このM-63のフライトでもこの自動システムが利用されましたが、万が一の技術的なトラブルに備え、バックアップ体制が常に準備されています。この時のミッションにおいても、ISSに滞在中の宇宙飛行士であるユーリ・マレンチェンコ氏が、予備のTORU手動操縦システムを使って地上から遠隔で機体を誘導できるよう、待機態勢を整えていました。このような二重のシステムによって、ISSへの安全かつ確実な接続が保証されています。

プログレスM-63は、ISSに滞在するクルーのために様々な種類の重要な物資を運びました。このフライトで届けられた物資の総量は2,326キログラムに達しました。補給された物資の内訳は以下の通りです。ISSの軌道維持や姿勢制御に必要な推進剤が528.5 kg、宇宙飛行士の呼吸に必要な酸素および空気が46 kg、生活用水や実験用水として使用される水が約419.5 kg、そして食料、衣料品、実験装置、部品、個人用物品など、様々なカテゴリーを含むドライカーゴが1326.6 kgでした。これらの物資は、ISSが安定して運用され、長期滞在する宇宙飛行士が快適かつ安全に任務を遂行するために不可欠なものです。

プログレスM-63は、約2ヶ月間にわたりISSに結合し、貯蔵モジュールとして機能したり、ISSの軌道修正などに使用されたりしました。その任務を終え、2008年4月7日8時49分（GMT）にISSからドッキングを解除して分離しました。その後、同日11時50分（GMT）に、地球の大気圏に再突入するための軌道離脱噴射を実行しました。軌道を離脱した機体は、制御された形で太平洋上空へと誘導され、大気圏に再突入しました。大気との激しい摩擦によって機体は高温になり、その大部分が燃え尽きました。燃え残った機体の一部は、環境や船舶などに影響を与えないよう事前に計算された安全な海域に、グリニッジ標準時のおよそ12時36分頃に落下しました。これにより、プログレスM-63の一連のミッションは完了しました。

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