プログレスM1-9

プログレスM1-9

プログレスM1-9（Progress M1-9）は、ロシア連邦宇宙局が運用した無人宇宙補給機で、国際宇宙ステーション（ISS）への定期的な物資輸送を任務とする「プログレス補給船」の一機です。NASAでは「プログレス9（Progress 9）」または略称「9P」として識別されました。本機はプログレス補給船の中でも比較的新しいProgress-M1型のバージョン11F615A55にあたり、シリアル番号は258が付与されています。

飛行の詳細

プログレスM1-9の打ち上げは、2002年9月25日の16時58分24秒（協定世界時、UTC）に実施されました。カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地の1番射点から、ソユーズFGロケットに搭載されて宇宙へと旅立ちました。打ち上げから数日後、本機は予定通りISSへ接近し、2002年9月29日の17時00分54秒（UTC）に、ISSのロシア区画「ズヴェズダ」モジュールの船尾側ポートへの自動ドッキングに成功しました。

ドッキング中、プログレスM1-9はISS滞在クルーのために多岐にわたる補給物資を届けました。これには、宇宙空間での生活に不可欠な食料や飲料水、呼吸用の酸素といった生命維持に必要な物資が含まれていました。また、ISSで行われる様々な科学研究活動を支えるための実験装置や消耗品、さらには宇宙ステーションの運用に必要な機材や交換部品なども搭載されていました。これらの物資補給は、ISSが継続的に運用され、科学的な成果を上げ続ける上で極めて重要な役割を果たしました。

任務完了と廃棄

ISSにおいて約4ヶ月間にわたる補給任務を終えたプログレスM1-9は、次のプログレス補給船（プログレスM-47）がドッキングするためのポートを空けるため、ISSからの分離準備に入りました。そして、2003年2月1日の16時00分54秒（UTC）に、ズヴェズダモジュールから無事にドッキング解除されました。ISSから離脱した本機は、その数時間後に軌道を離脱する最終段階へと移行しました。同日19時10分00秒（UTC）に軌道離脱のための噴射を行い、地球の大気圏へと再突入しました。

大気圏再突入の際、宇宙機の大部分は超高速での落下に伴う断熱圧縮と空気抵抗による摩擦熱によって燃え尽きます。プログレスM1-9もその例に漏れず、その機体のほとんどは大気圏で破壊されました。燃え尽きずに地上まで落下する可能性のあるごく一部の残骸は、船舶の航行などに危険が及ばないよう、あらかじめ設定された太平洋上の安全な海域へ落下するように軌道が調整されています。本機の燃え残りは、同日20時00分28秒（UTC）頃に海面に落下したと推定されています。

興味深い偶然として、プログレスM1-9がISSからドッキング解除され、その軌道を離脱する一連のプロセスは、アメリカのスペースシャトル「コロンビア号」が地球への帰還途中に空中分解事故を起こしたわずか約6時間後に行われました。この日は宇宙開発史上、記憶に残る一日となりました。

プログレスM1-9は、ISSへの安定した補給ラインを維持するロシアの重要な貢献の一翼を担い、その任務を無事に完了しました。

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