プロチェス協会

プロチェス協会（Professional Chess Association, PCA）は、1993年にガルリ・カスパロフとナイジェル・ショートによって設立されたチェス組織です。設立の背景には、当時のFIDE（国際チェス連盟）会長フロレンシオ・カンポマネスによる、チェス世界選手権の開催地決定における不透明な運営がありました。

FIDEの規則では、世界選手権決勝マッチの開催地は、FIDE、世界チャンピオン、挑戦者の三者の合意によって決定されることになっていました。しかし、カンポマネス会長はこれらの規則を無視し、一方的に開催地をマンチェスターと発表しました。これに対し、当時世界チャンピオンであったカスパロフと挑戦者となったショートは、FIDEの不当な行為とプロ意識の欠如に強い不満を抱きました。この結果、両者はFIDEから独立し、独自の組織としてプロチェス協会を設立し、その下で世界選手権マッチを開催することを決定しました。

当然ながら、FIDEはこの動きに対して反発し、カスパロフから世界チャンピオンの称号を剥奪し、ショートのカスパロフへの挑戦権も否定しました。しかし、カスパロフとショートは、1993年10月にロンドンのサヴォイ・シアターで対戦し、カスパロフが12.5対7.5で勝利しました。これにより、カスパロフはPCA世界チャンピオンとなりました。一方、FIDEはカスパロフとショートを排除し、カスパロフの前にFIDE世界チャンピオンであったアナトリー・カルポフと、挑戦者決定戦でショートに敗れたヤン・ティマンを対戦させ、カルポフが勝利しました。この結果、チェスの歴史上初めて、二つの世界チャンピオンタイトルが並立するという異常事態が発生しました。

1993年から1995年にかけて、PCAはFIDEの世界選手権予選システムを踏襲し、インターゾーン大会と挑戦者決定戦を開催しました。インドのグランドマスター、ビスワナサン・アナンドが挑戦権を獲得し、1995年9月11日からニューヨークの世界貿易センターでカスパロフとの対戦に臨みました。しかし、カスパロフが10.5対7.5で勝利し、PCA世界チャンピオンのタイトルを防衛しました。

しかし、1996年にPCAはメインスポンサーであったインテルを失い、組織はほどなく解散しました。カスパロフは挑戦者を決定するための適切な予選システムを組織することができなくなり、2000年には自らの意思で選んだウラジーミル・クラムニクと試合を行い、敗北しました。この敗北は、カスパロフのキャリアにおける大きな転換点となりました。PCAの解散は、チェス界における組織的な分裂と、その後の混乱を象徴する出来事として記憶されています。PCAは短命に終わったものの、チェス界におけるプロフェッショナリズムと選手たちの権利をめぐる議論を活発化させる上で、重要な役割を果たしました。

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