プロップサイクル

1996年 7月、ナムコ（現在のバンダイナムコエンターテインメント）から登場したアーケードゲーム「プロップサイクル」は、プレイヤーが特徴的な自転車型筐体に乗り込み、ペダルを漕ぐことで人力飛行機「ラペロプター」を操作するというユニークな体感ゲームとして注目を集めました。大空を自由に飛び回る爽快感と、風船を割って得点を競うシンプルなゲーム性が融合した作品です。

ゲームの基本的な目的は、広大なフィールドに配置された多数の風船に機体を接触させて割ること。風船を割るごとに点数が加算され、決められた制限時間内にどれだけ多くの得点を稼げるかで成績が評価されます。フィールドには得点が得られる通常の風船のほか、割ることで残り時間が増加する点滅した風船も存在します。各風船には、獲得できる点数や増加する制限時間が直接書かれており、プレイヤーはこれを参考にどの風船を狙うか戦略を立てることができます。

このゲームの没入感を高める要素の一つが、凝った作りの筐体です。プレイヤーが跨る部分は、フィットネスジムに置かれているようなエアロバイクに似た形状をしています。操縦はハンドルとペダルで行い、ハンドルを前後に倒すことでラペロプターの下降・上昇を操作し、左右に傾けることで旋回を行います。ペダルを漕ぐ速度が、そのまま機体の飛行速度に直結しており、速く漕げばスピードに乗った飛行が楽しめます。筐体には大きく分けて2つのタイプがありました。一つは50インチのリアプロジェクションモニターを備え、さらにプレイヤーの操作に合わせてバイク部分が前後左右に傾くギミックを搭載したデラックスタイプ。もう一つは一般的な29インチのブラウン管モニターを採用したスタンダードタイプです。どちらのタイプも、モニターの下部には「風体感装置」と呼ばれる送風ファンが2基搭載されており、ゲーム中の飛行速度や状況に合わせてプレイヤーに風を送る演出が施されており、よりリアルな飛行感覚を演出していました。

ゲームには、プレイヤーの腕前に応じて選べる2つのモードが用意されています。

ポイントアタックモード（初級）
このモードでは、ゲーム開始時に提示される3つの異なるフィールドの中から一つを自由に選択し、そのフィールド内で制限時間内にどれだけ多くの得点を獲得できるかを純粋に競います。シンプルなルールで、初めてプレイするプレイヤーや気軽にハイスコアを目指したいプレイヤーに適しています。

ストーリーモード（上級）
全4ステージ構成のこのモードは、より挑戦的な内容となっています。まず最初の3ステージは、ポイントアタックモードと同じ3つのフィールドから一つを選んでプレイします。各ステージのクリア条件は、フィールド内の全ての得点風船を割るか、あるいは制限時間終了時点で定められた規定点数を超えることです（時間増加風船はクリア条件に関わりません）。ステージをクリアすると、再びフィールド選択画面に戻り、まだクリアしていない別のフィールドに挑戦できます。一度クリアしたフィールドは再選択できません。全ての得点風船を割ってパーフェクトクリアを達成した場合は、特別なタイムボーナスとパーフェクトボーナスが得られます。ゲームオーバーになってもコンティニューが可能で、その場合は次のプレイに必要な規定点数が緩和される救済措置があります。3つの初期フィールド全てをクリアすると、最終ステージである「浮遊大地ソリター」への挑戦権が得られます。この最終ステージは一度きりの挑戦となり、コンティニューはできません。フィールドに浮かぶ全ての赤い玉（ゲーム世界の物語上では風船の原型とされています）を制限時間内に全て破壊できればゲームクリアとなりますが、一つでも残してしまうとその場でゲームオーバーとなる、非常に緊張感のあるステージです。なお、ソリターの赤い玉には得点は表示されていませんが、システム上は全て300点として扱われます。また、時間増加の玉は登場しません。

ゲームを彩るプレイフィールドは個性的です。ターゲットとなる風船や赤い玉の配置は、固定パターンか、いくつかのパターンからランダムに選ばれるため、繰り返しプレイして位置を記憶することが攻略の一助となります。

クリフロック（Cliff Rock）
渓谷から始まり、滝が流れ落ちる広場へと繋がるフィールド。比較的空間が広く、ゆったりと飛行しやすい初心者向けのコースです。

ウインドウッズ（Wind Woods）
狭く入り組んだ洞窟を抜け、月明かりの下の広場に到達するフィールド。洞窟内では精密な操作が求められる場面があり、行動が制限される感覚が特徴です。夜の静寂が漂う雰囲気も魅力です。

インダスターン（Industarn）
行き止まりが多い洞窟や断崖に囲まれた狭い空間、細い通路が多数配置された、難易度の高いフィールドです。背景には謎めいた遺跡のような建造物が点在しており、ゲームのバックストーリーや世界観が示唆される要素も含まれています。

浮遊大地ソリター（Solitar）
上級モードの最終ステージ専用フィールドであり、通常のモード選択画面からは選ぶことはできません。空中に浮かぶ巨大な岩塊や構造物が舞台となります。

「プロップサイクル」は、そのユニークなゲーム性と体感性から、後年も様々な形で展開されています。

プロップサイクル Ride the wind
2003年11月12日には、ボーダフォンライブ！向けに携帯アプリ版として配信されました。開発は電遊社。ゲーム内容はアーケード版と同様に時間内に風船を割って得点を競うものですが、グラフィックは2Dで表現されています。

極限度胸試しハネチャリ
2017年 7月14日、VR ZONE Project i Canのアクティビティとして登場。自転車型筐体で人力飛行機を操作し、VR空間で大自然や遺跡を飛び回るという基本的なコンセプトはプロップサイクルと共通しています。しかし、操作方法は異なり、ペダルを漕ぐ・止めることで上昇下降を行い、ハンドル操作で前進方向を決定するという独特なシステムが採用されました。バンダイナムコエンターテインメントの齊田一統氏によると、プロップサイクルの自転車型筐体をVRで活用するというアイデアが開発の着想源の一つとなったとのことです。VR ZONE SHINJUKUが閉業し、MAZARIAへ移設された際には、待機エリアのBGMとしてプロップサイクルの「Cliff Rock」が使用されるという粋な演出もありました。

超次元タイムボンバー
ゲームセンターでは一人プレイ専用だったプロップサイクルですが、当時ナムコがテレビ番組への技術協力を行っていたテレビ朝日系のバラエティ番組『超次元タイムボンバー』では、番組オリジナルに改造された筐体が登場しました。「フライングハイ」と名付けられたこのコーナーでは、2人乗りのプロップサイクルに挑戦。前席のプレイヤーが操縦（操舵）、後席のプレイヤーがペダル操作を担当する役割分担が設けられました。コース上の壁などに激突すると、後席プレイヤーが装着する特殊な手袋「ボンバーグローブ」に電気ショックが与えられるという罰ゲーム要素も盛り込まれていました。また、コース中には割ると即ゲームオーバーとなる「ドクロ風船」も登場。これは特定の距離まで接近すると突然ドクロの表情を見せるという仕掛けがあり、それをいかに回避するかが後席プレイヤーの腕の見せ所となっていました。後に、一部のゲームセンターでも番組と同じステージがプレイできるバージョンアップ版が期間限定で稼働しました。

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