プロトオス

プロトオス（古希: Πρόθοος, ラテン語: Prothous）という名前は、古代ギリシア神話において複数の人物に与えられています。

この名前で知られる人物は以下の通りです。

アルカディア王リュカーオーンの子
アルカディア地方の王リュカーオーンは、神々を試すために人間の肉を食卓に出すなどの冒涜を行い、ゼウスの怒りを買って多くの息子たちと共に狼に変えられたと伝えられています。プロトオスは、このリュカーオーンの息子たちの一人として名前が挙げられています。

アグリオスの子
別の伝承では、プロトオスはアグリオスという人物の息子として言及されています。アグリオス自身も様々な系統が考えられますが、このプロトオスに関する具体的な物語や役割についての詳細は多く伝わっていません。

ペーネロペーの求婚者
イタケー島の王オデュッセウスがトロイア戦争からの帰還が遅れる間に、彼の妻ペーネロペーに結婚を迫った多くの貴族たちの一人として、プロトオスの名前が見られます。これらの求婚者たちは、オデュッセウスの留守宅で傍若無人に振る舞い、最終的に帰還したオデュッセウスとその息子テーレマコスによって討伐されました。

テントレードーンの子
最もよく知られているプロトオスは、マグネーシアの王テントレードーンの息子です。彼はトロイア戦争におけるアカイア（ギリシア）側の指導者の一人として歴史に名を残しています。

テントレードーンの子プロトオスは、父から王位を継承し、自らの領地であるマグネーシアから集めた40隻の船団を率いて、アガメムノーンが指揮するトロイア遠征に参加しました。彼はヘレネーの求婚者リストにも名前があり、かつてスパルタ王メネラーオスと結婚する前のヘレネーに求婚した多くの英雄の一人でした。ヘレネーの父テュンダレオースが求婚者たちに誓わせた「ヘレネーが誰を選んでも、他の求婚者はその決定を尊重し、万一の際には選ばれた夫を助ける」という誓い（テュンダレオースの誓い）に従い、彼はトロイア戦争への参戦義務を果たしました。

長きにわたるトロイア戦争が終結し、多くの英雄たちがそれぞれの故郷を目指して出航する中、プロトオスもマグネーシアへの帰途につきました。しかし、彼の帰還の旅は悲劇的な結末を迎えます。アガメムーンへの恨みを抱いていたエウボイア島の王ナウプリオスは、ギリシア船団を難破させるため、危険な航路であるカペーレウス岬の沖で偽の灯台の光を灯しました。悪天候の中、この欺瞞に惑わされたプロトオスの船団は岩礁に乗り上げて難破し、プロトオス自身も海に呑まれて命を落としました。

しかし、彼の部下たちの全てが溺死したわけではありませんでした。難破から生き延びて奇跡的に海岸に漂着した者たちは、やがてクレーテー島に新たな土地を見つけ、そこに定住したと伝えられています。これにより、彼の部下たちは故郷には戻れませんでしたが、新たな共同体を築くことができました。

このように、「プロトオス」という名前は、異なる背景や物語を持つ複数のギリシア神話上の人物を指しています。中でも、トロイア戦争に参加し、悲劇的な最期を遂げたマグネーシアのプロトオスに関する記述が比較的多く残されています。

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