プロベラム

プロべラムとは

プロべラム（Probellum）は、短期間ながらボクシング界で活動したプロモーション会社です。2021年9月、ゴールデンボーイ・プロモーションズの元最高経営責任者（CEO）であるリチャード・シェーファー氏が設立に関わったことで注目を集めました。しかし、その活動期間を通じて、ある人物との関連が常に指摘され続けることになります。

関係疑惑の浮上

プロべラムは設立当初から、アイルランドの犯罪組織のリーダーと目されるダニエル・キナハン氏、そして彼が立ち上げに関与したとされるボクサーマネジメント会社MTKグローバルとの深いつながりがあるとの見方が強かったのです。プロべラムが契約したボクサーの多くがMTKグローバルとも契約していたことや、プロべラムが主催したドバイでの興行にキナハン氏が姿を見せたこと、さらには MTKグローバルがかつてプロべラムの商標登録を行っていたとする報道も、こうした疑惑を裏付ける形となりました。

米国制裁とその波紋

事態が大きく動いたのは2022年4月12日でした。アメリカ合衆国国務省がダニエル・キナハン氏を犯罪組織の幹部と正式に認定し、彼に対する制裁措置を発表したのです。さらに、キナハン氏の逮捕や有罪判決につながる情報提供に対して、多額の懸賞金（500万米ドル、当時のレートで約6億9千万円）を支払う意向も示されました。

この米国政府の決定は、ボクシング界に大きな波紋を広げました。特に、大手プロモーションであるトップランク社のボブ・アラム氏は、この発表を受けてプロべラムおよびMTKグローバルとの協力関係を解消すると表明。既に決定していた一部の試合（例えばジャニベク・アリムハヌリ対ダニー・ディグナム戦など）や、自身が直接交渉に関わらなかった一部のビッグマッチ（井上尚弥選手対ノニト・ドネア選手第2戦、井上尚弥選手対ポール・バトラー選手戦など）を除き、両社との取引を停止する姿勢を示しました。

事業への影響拡大

米国政府の制裁とそれに伴う主要プロモーターの動きに対し、プロべラムの社長を務めていたシェーファー氏は2022年4月15日のインタビューで、プロべラムとキナハン氏の関係を強く否定しました。さらに、もしプロべラムに所属するボクサーの中にキナハン氏との繋がりがある者がいた場合、その契約を解除する考えも示しました。

しかし、一度生じた疑惑は簡単には払拭されませんでした。2022年4月19日には、プロべラムの興行をヨーロッパやインド亜大陸で放送する契約を結んでいたディスカバリー傘下のユーロスポーツが、プロべラムとの放送契約を解除したことが明らかになりました。北アメリカでの放送を予定していたfuboTVや、ラテンアメリカでの放送を担う予定だったESPN Knockoutも同様に契約を打ち切りました。イギリスの放送局であるSky Sportsに至っては、プロべラムまたはMTKグローバルと契約しているボクサーの番組出演を禁止するという措置を取りました。

これらの放送契約の打ち切りは、プロべラムの事業に深刻な打撃を与えました。さらに、井上尚弥選手とポール・バトラー選手による世界バンタム級4団体統一戦という歴史的な試合が、バトラー選手の母国であるイギリスでテレビやインターネットでの放送・配信が行われなかったことも、プロべラム（およびMTKグローバル）のキナハン氏との関連が疑われた影響ではないかと指摘されています。

会社の終焉

度重なる関係疑惑とそれに伴う事業上の困難に直面したプロべラムは、最終的にその活動を終えることになります。2023年、プロべラムはドバイを拠点とする新しいボクシングプロモーション会社であるディスラプト・プロモーションズに売却され、その歴史に幕を下ろしました。

主な元契約ボクサー

レジス・プログレイス
ノニト・ドネア
エイマンタス・スタニオニス
オシャキー・フォスター
ポール・バトラー
サニー・エドワーズ
チャーリー・エドワーズ
リアム・ウィリアムス
エドゥアルド・エルナンデス
リッキー・バーンズ
ドニー・ニエテス
バハディール・ジャロロフ（東京五輪スーパーヘビー級金メダル）
エベルト・ソウザ（東京五輪ミドル級金メダル）
ハバネス・バッチコフ（東京五輪ライト級銅メダル）
ロッキー・フィールディング
バドゥ・ジャック
パット・マコーマック（東京五輪ウェルター級銀メダル）

主な元提携プロモーション

ワッサーマン・ボクシング
ウニヴェルズム（ドイツ）
グループ・イヴォン・ミシェル（カナダ）
マラビージャボックス・プロモーションズ（スペイン）
カイノック・ボクシング（スコットランド）
* バッファロー・ボクシング（ニカラグア）

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