ヘイスティロード

ヘイスティロード：プリークネスの英雄とその遺産

ヘイスティロード(Hasty Road, 1951年-1978年)は、アメリカ合衆国で活躍したサラブレッド競走馬にして、成功をおさめた種牡馬です。その名を最も輝かせたのは、1954年のプリークネスステークス制覇でしょう。気性が荒く、大柄な体格(体高約165.1cm)の彼は、競走馬としての才能と、時として手に負えない気性の両面を備えた馬でした。

輝かしいキャリアの幕開け：2歳時代

ケンタッキー州のウォルナットスプリング牧場で生産されたヘイスティロードは、キーンランドのサマーセールで23,100ドルという高値で落札されました。オハイオ州の住宅販売業者、アリー・ルーベン氏とその妻ビリー氏によって所有され、ハリー・トロツェク調教師の管理下に置かれました。

2歳となった1953年、ヘイスティロードはデビュー戦から2連勝を飾ります。続くアーリントンフューチュリティでは、1番人気に応え、2馬身半差という圧勝劇でレースレコードを樹立しました。その後もワシントンパークフューチュリティを制し、主要な2歳競走で活躍、賞金総額は277,132ドルに達し、当時2歳馬として2位という輝かしい成績を残しました。『ターフ・アンド・スポーツ・ダイジェスト』誌においては最優秀2歳牡馬に選出される栄誉に浴しました。

ダービー惜敗からのプリークネス制覇：3歳時代

3歳となった1954年、ヘイスティロードはケンタッキーダービーへの挑戦を挑みます。ダービートライアルステークスではディターミンを破り、自信をつけて臨んだダービーでしたが、惜しくもディターミンに1馬身半差で敗れ2着となりました。騎手のアダムスは、レース終盤における観客の騒ぎが馬を動揺させた可能性を後に語っています。

しかし、ヘイスティロードの物語はここで終わらなかったのです。プリークネスステークスでは、コーリレイションを相手に、激しい接戦の末にクビ差で勝利をもぎ取りました。この勝利は、39歳のアダムス騎手にとって初のクラシック競走制覇となりました。このレース後、ルーベン氏の意向によりベルモントステークスへの出走は取り消され、ヘイスティロードはシカゴに戻りました。その後もいくつかのレースに出走しましたが、思うような成績は残せず、1955年夏に引退することとなりました。

種牡馬として、そしてその血を受け継ぐ者たち

引退後は種牡馬として活躍しました。アメリカジョッキークラブの記録によると、420頭の産駒のうち277頭が勝ち上がり、29頭がステークス競走を制しています。代表産駒には、ヨーロッパでチェヴァリーパークステークスを制したバークレースプリングスや、クラークハンデキャップを制したコピーチーフなどがいます。

さらに、母の父として、数々の名馬に血を受け継いでいます。その中には、アメリカ殿堂馬フォアゴーや、2000ギニー優勝馬ノノアルコなどの名馬が含まれています。ヘイスティロードの遺伝子は、現代のサラブレッド競走界においても、その影響力を示していると言えるでしょう。

1978年、27歳でこの世を去ったヘイスティロードは、バージニア州のメドウヴィル牧場に埋葬されています。彼の伝説は、プリークネスステークスの栄光だけでなく、数々の名馬を輩出した種牡馬としての功績、そして、現代サラブレッド界への永続的な影響として、長く人々の記憶に刻まれています。

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