ディターミン

ディターミン：ケンタッキーダービーを制した小さな巨人

1951年4月7日生まれのディターミンは、アメリカ合衆国で活躍した競走馬にして、後に種牡馬としても成功を収めたサラブレッドです。芦毛の小さな体躯ながら、類まれな競走能力で人々を魅了し、特に1954年のケンタッキーダービー制覇は彼の名を不朽のものとしました。その輝かしい経歴と、幾多のドラマを秘めた生涯を紐解いていきましょう。

華麗なる競走馬としてのキャリア

ケンタッキー州の生産者、エスリー・アスブリーによって生産されたディターミンは、体高15ハンド、体重900ポンドに満たない小柄な馬でした。この体格から「ピントサイズの牡馬」や「小さな包装のダイナマイト」といった愛称で呼ばれ、そのギャップが魅力の一つとなっていました。

1952年、キーンランドのサマーセールで自動車販売業者のアンドリュー・J・クレヴォリン氏に1万2千ドルで落札されます。馬名登録には苦労したものの、妻の勧めで「determine（決定する）」と名付けられ、晴れて競走馬としての道を歩み始めました。

ウィリアム・モルター調教師の指導の下、1953年の2歳シーズンはカリフォルニアでデビュー。サンフランシスカンハンデキャップとロバートオブライエンハンデキャップを制し、早くも購入額を大きく上回る賞金を獲得しました。

翌1954年、3歳となったディターミンはサンタアニタダービーを制覇し、ケンタッキーダービーへの挑戦を表明。しかし、調教師モルターは長距離輸送のリスクを懸念していました。それでも遠征を決断し、帯同馬と共に空輸されることとなります。機内で暴れた場合、モルターが自ら射殺するという条件付きの輸送だったという逸話も残されています。

ダービー直前のダービートライアルステークスでは、強豪ヘイスティロードと激突。トラックレコードをかけた死闘の末、惜しくもアタマ差で敗れましたが、3着馬とは11馬身差をつける圧倒的な力を見せつけました。

そして迎えたケンタッキーダービー。単勝オッズ5倍の2番人気に支持されたディターミンは、スタート直後に落馬寸前の危機を乗り越えます。しかし、持ち前の粘り強さで最後の直線でヘイスティロードを捉え、1馬身差で優勝。芦毛馬としては初のダービー制覇という偉業を達成しました。

この勝利の後、モルター調教師はディターミンの負担を考慮し、残りの三冠レースを回避。カリフォルニアに戻り、その後も古馬戦線で活躍を続けました。顎の感染症やハンデキャップの斤量に苦しみながらも、4歳までに44戦18勝という輝かしい成績を残し、引退を迎えます。

種牡馬としての成功とその後

引退後は90万ドルのシンジケートを組まれ、カリフォルニア州のホナータ牧場で種牡馬となりました。1972年、腎臓疾患のため、同地でその生涯を閉じました。

アメリカジョッキークラブの記録によると、ディターミン産駒334頭のうち211頭が勝ち上がり、21頭がステークス競走を制覇しています。その中でも特に有名なのが、2代に渡ってケンタッキーダービーを制したディサイデッドリーです。

ディターミンの血統

ディターミンの母馬コウビスは、アスブリー氏の生産馬。生まれた時から口蓋裂をしていたものの、医師であるアスブリー氏の独自の治療によって修復されたという逸話があります。さらに3代母のスウィングオンは、名馬シービスケットの母馬としても知られる名血を受け継いでいました。

ディターミンは、その小さな体躯からは想像もできないほどの大きな力と、幾多の困難を乗り越える強靭な精神力を持った馬でした。彼の物語は、競走馬としての成功にとどまらず、種牡馬としての成功、そして彼が持つ血統の素晴らしさなど、様々な側面から、後世に語り継がれるべき、まさに伝説的な存在と言えるでしょう。

もう一度検索