ヘッドシザース

ヘッドシザース：格闘技における絞め技

ヘッドシザースは、プロレス、MMA、ブラジリアン柔術など、様々な格闘技で使用される絞め技です。両脚で相手の頭部や頸部を挟み込むことで、窒息や意識喪失に追い込む強力な技として知られています。

柔道におけるヘッドシザース

柔道においては、ヘッドシザースは長らく禁止技とされてきました。その歴史は古く、1928年の『柔道精解』に掲載された明治神宮体育大会柔道乱取審判規程で既に禁止技とされており、その後も昭和天覧試合御大礼記念天覧武道大会（1929年）、大日本武徳会（1941年以前）、そして講道館柔道乱捕試合審判規程（1941年3月21日）と、複数の機関で禁止が確認されています。

この禁止の背景には、危険性の高さがあります。ヘッドシザースは、適切な技術とコントロールがなければ、相手選手に深刻な怪我を与える可能性があるためです。しかし、相手の腕一本が両脚の中にある場合は、三角絞として有効な技となり、使用が許される場合もありました。

高専柔道においても禁止技であったヘッドシザースですが、ノンフィクションライターの増田俊也氏は、この禁止こそが、高専柔道における三角絞の誕生につながったと指摘しています。三角絞は、ヘッドシザースの禁止というルール上の隙を突いて生まれた技であり、その原型は1921年頃まで遡ると考えられています。『柔道大事典』も、三角絞をヘッドシザースの原型とする見解を示しています。

ブラジリアン柔術におけるヘッドシザース

ブラジリアン柔術では、国際ブラジリアン柔術連盟および国際柔術連盟ともに、首関節を極めない限り、全カテゴリーで使用が認められています。ただし、首関節を極める場合、ティーン（U16）以下のカテゴリーでは禁止されています。三角絞と比較すると、ヘッドシザースが極まる頻度は少ないとされています。

ヘッドシザースの変形技

ヘッドシザースには、いくつかの変形技が存在します。

足挟み

足挟み（あしばさみ）は、ヘッドシザースの基本形と言える技です。両膝付近を相手の頸部に当て、両足首を組んで両脚を伸ばすことで絞め上げます。川石酒造之助は、横三角絞のような体勢から、両足首を組んだまま腰を捻り、両脚を横転させることを推奨しています。矢野卓見の得意技としても知られており、前から絞める場合と横から絞める場合の両方があります。別名として、膝絞（ひざじめ）、レッグ・スクイーズ (leg-squeeze)、洗濯挟み（せんたくばさみ）、首絞（くびじめ）などと呼ばれています。ただし、頸絞（くびじめ）は、フロントチョークの別名でもある点に注意が必要です。

首4の字固め

首4の字固め（くびよんのじがため）は、足首をもう一方の脚の膝裏に当てて両脚を4の字状に組むことで絞め上げる技です。プロレスラーのタイガー・ジェット・シンは、1980年のメキシコでのヘビー級タイトルマッチで、アントニオ猪木をこの技で失神させていることで有名です。前から絞める場合と背後から絞める場合があり、別名としてフィギュア・フォー・ネック・ロック、コブラ・シザースなどと呼ばれています。

まとめ

ヘッドシザースは、その危険性から柔道では禁止技とされてきましたが、ブラジリアン柔術などでは有効な技として用いられています。様々な変形技も存在し、その歴史と技術的側面は、格闘技の進化を語る上で重要な要素となっています。それぞれの技の特徴を理解し、安全に練習を行うことが重要です。

もう一度検索