ヘヒト (特殊潜航艇)

ヘヒト（Type XXVIIA）

ヘヒト（Hecht）またはType XXVIIAは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツで建造された、2人乗りの全電動特殊潜航艇です。ヘヒトとはドイツ語でカワカマスを意味します。

開発経緯

ヘヒトの開発は、イギリスのX級潜水艦X6とX7が、ドイツ戦艦ティルピッツ撃沈作戦（ソース作戦）中に沈没し、ドイツ軍がこれらをサルベージしたことがきっかけでした。ドイツ海軍の「Hauptamt Kriegschiffbau（艦艇建造本部）」は、鹵獲したX級潜水艦を徹底的に調査し、これを基に2人乗り潜航艇の設計を開始しました。この設計はType XXVIIAとして制式化され、「ヘヒト」と命名されました。

設計

X級潜航艇と同様に、Type XXVIIAも敵艦の喫水線下を攻撃するために、爆発物を搭載するように設計されました。ただし、X級よりも大幅に小型化されています。推進方式はディーゼル・エレクトリックではなく、12馬力のAEG製電動魚雷モーターのみに依存していました。これは、潜航状態での使用を前提としていたため、ディーゼルエンジンが不要と判断されたためです。しかし、その結果、4ノットで69海里という非常に短い航続距離となりました。

当初、ヘヒトは防潜網などの障害物を突破するために、水中翼やフィンを持たない設計でした。艇のトリムは、耐圧殻内部の重量を調整することで制御される予定でしたが、訓練中に重量物の移動が迅速に行えないことが判明し、水中翼とフィンが追加されました。しかし、バラストタンクを装備していなかったため、潜航能力は依然として不十分でした。

ヘヒトは爆発物を搭載するように設計されましたが、カール・デーニッツは沿岸での船舶攻撃を可能にするために、魚雷の搭載を主張しました。そのため、ヘヒトは艇に吊り下げられた魚雷1発、または機雷1発、あるいは艇首の吸着機雷で武装するように設計されました。

構造

ヘヒトの外形は、イギリスのウェルマン潜航艇に類似しています。艇首には取り外し不可能な爆薬が装着され、前部区画にはバッテリーとジャイロコンパスが搭載されていました。ジャイロコンパスは、ドイツの特殊潜航艇としては初の装備であり、潜航状態での航行には不可欠とされていました。操縦区画は前部区画の後方にあり、乗員2名がセンターライン上に並んで座る座席が設けられていました。前方には機関員、後方には艇長が座り、艇長にはペリスコープと航法用の透明なアクリル製ドームが与えられました。

ヘヒトは、主に海面下での運用を想定して設計されており、ジャイロコンパスの装備はその現れと言えます。

生産と運用

1944年1月18日、デーニッツはアドルフ・ヒトラーに新規設計について説明し、ヒトラーはこれを承認しました。同年3月9日、試作艇の建造契約がキールのゲルマニアシャフト社と締結され、3月28日にはさらに52隻の潜航艇の建造契約が追加されました。

1944年5月から8月にかけて、合計53隻のヘヒトが建造されましたが、性能が不十分であったため、実戦投入は行われず、主にゼーフントの搭乗員訓練に使用されました。

艇首には、磁気機雷の代わりにダイバーを乗せることも可能でした。

参考文献

(参考文献の情報は提供されていません)

関連項目

ドイツ海軍小型戦闘部隊

外部リンク

* Infosite Hecht midget sub

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