ヘラクロナス

ヘラクロナス（Ηρακλεωνάς、626年 - 642年?）は、東ローマ帝国ヘラクレイオス王朝の皇帝として知られています。彼の治世は短く、激動の時代を象徴する出来事が数多くありました。彼は一般にヘラクレイオス2世として公式に知られていますが、若くして皇帝となったため、「小ヘラクレス」という愛称で呼ばれることがありました。

生涯

ヘラクロナスは、ヘラクレイオス1世とその姪であるマルティナの間に生まれました。父帝がサーサーン朝ペルシアとの戦いに赴いていた際、ラツィカで誕生しました。彼は両親にとっておそらく4番目の子供でしたが、身体的な障害を持たない最初の子でした。ヘラクレイオスとマルティナは叔父と姪という近親婚であり、10人の子供に恵まれましたが、その多くは障害や病弱を抱えていました。

父帝の治世末期、母マルティナの影響力を背景に、ヘラクロナスは638年7月4日にアウグストゥスの称号を得ました。641年に父帝が亡くなると、遺言により異母兄のコンスタンティノス3世と共同皇帝として帝位に就きました。しかし、即位からわずか4ヶ月後、コンスタンティノス3世が急死し、ヘラクロナスが単独皇帝となりました。この出来事は、母マルティナと共にコンスタンティノス3世を暗殺したという疑惑を引き起こし、内乱へと発展しました。

最終的に、ヘラクロナスとその母マルティナは権力の座から追放されました。マルティナは舌を切断され、ヘラクロナスは鼻を削がれた上でロードス島に追放されました。その後、帝位はコンスタンティノス3世の遺児であるコンスタンス2世が継承しました。

ヘラクロナスの事例は、帝位を追われた皇帝に身体的な切断刑が加えられた最初の例となりました。この慣習は、おそらくペルシアから導入されたと考えられています。古代ローマ皇帝の即位には「五体満足でなければならない」という不文律があり、失脚した皇帝が再び帝位に就くことを防ぐため、目を潰したり、鼻や耳を削ぐといった残酷な処罰が、この後しばしば行われるようになりました。

追放後のヘラクロナスについては、消息が不明です。翌年には亡くなったという説もありますが、確かなことは分かっていません。彼の短くも波乱に満ちた生涯は、ビザンツ帝国の権力闘争の激しさと、皇帝の地位がどれほど不安定なものであったかを物語っています。

参考文献

井上浩一 『ビザンツ皇妃列伝』 筑摩書房、1996年
この記事には、アメリカ合衆国内で著作権が消滅した次の百科事典本文を含みます: Chisholm, Hugh, ed. (1911). "HERACLIUS ('HpaeXaos) (c. 575-642)". Encyclopædia Britannica (英語) (11th ed.). Cambridge University Press.

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