ヘラルド・オブ・アームズ

ヘラルド・オブ・アームズ（紋章官）について

ヘラルド・オブ・アームズ（英: herald of arms）は、紋章官の階級の一つで、パーシヴァント（紋章官補）とキング・オブ・アームズ（紋章官長）の中間に位置します。日本語では中級紋章官、あるいは単に紋章官と訳されることもあります。

歴史的背景

元々ヘラルドは、君主や貴族からの布告や声明を伝達する伝令官でした。現代でいう外交官のような役割を担っていたのです。例えば、百年戦争中には、フランスのヘラルドがイングランド王ヘンリー5世に対し、中断していた戦争の再開を要求したという記録が残っています。また、アジャンクールの戦いでは、両軍のヘラルドが戦況を見守り、イングランドの勝利を確認し、戦いの命名権を得たヘンリー5世に、近くの城の名前を献上したと伝えられています。

紋章官としての役割

他の紋章官と同様に、ヘラルドは主君の紋章で飾られたタバードと呼ばれる外衣を着用します。これは、中世後期の馬上槍試合において、騎士の紋章を管理・規制する役割を担っていたことの名残と考えられています。紋章学が発展し、厳密に管理されるようになった現代でも、世界の数カ国でヘラルドが紋章の管理監督を行っています。現代におけるヘラルドの主要な職務は紋章の専門家としての役割ですが、イギリスでは、国王の紋章が描かれたタバードを着用し、公式な布告を読み上げることもあります。

各国のヘラルド

現在でも、イギリス、アイルランド、カナダ、南アフリカ共和国など、いくつかの国で正式なヘラルドが職務を遂行しています。イングランドとスコットランドでは、多くのヘラルドが王国の常勤職員であり、「ヘラルド・オブ・アームズ・イン・オーディナリー」と呼ばれます。一方、一時的な任命による非常勤のヘラルドは、「ヘラルド・オブ・アームズ・エクストラオーディナリー」と呼ばれ、戴冠式のような特別な国家行事に任命されることがあります。カナダ紋章局は、長年の功績を称え、紋章官に「ヘラルド・オブ・アームズ・エメリタス」（名誉紋章官）の称号を授与しています。

スコットランドでは、氏族長（有力な貴族の家長）が、一族の紋章や系譜に関する事項を処理するために、私設の紋章官（通常はパーシヴァント）を任命することがあります。

各国のヘラルドの例

以下に、各国のヘラルドの例をいくつか示します。

イングランド
常任: リッチモンド、チェスター、ランカスター、ヨーク、サマセット、ウィンザー
非常任: アランデル、ボーモント、マルトレバース、ニュージーランド、ノーフォーク、サリー、ウェールズ

スコットランド
常任: オールバニー、アイレー、マーチモント、ロスシー、ロス、スノーダウン
非常任: オークニー

カナダ
常任: チーフ・ヘラルド・オブ・カナダ、アシニボイン、アタバスカ、カッパーマイン、フレーザー、ミラミチ、サガネー、サンローラン
非常任: アルビオン、キャピラノ、カウチン、ドーファン、ナイアガラ、ルージュ
名誉職: ウタウエ、リドー

インド
デリー

まとめ

ヘラルド・オブ・アームズは、単なる紋章官ではなく、歴史と伝統を受け継ぐ重要な存在です。紋章学の専門家として、各国の文化や歴史を支え続けています。

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