ヘリオトロープ

ヘリオトロープ (Heliotrope)

ヘリオトロープは、ムラサキ科キダチルリソウ属 (Heliotropium) に属する植物の総称であり、特に代表種であるキダチルリソウ(H. arborescens)を指すことが多いです。ここでは、キダチルリソウを中心に解説します。

名前の由来は、ギリシャ語の「helios（太陽）」と「trope（向く）」を組み合わせたもので、「太陽に向かう」という意味を持ちます。

特徴

原産地はペルーで、18世紀にヨーロッパに introduction されました。その後、世界中に広がり、日本には明治時代に伝わりました。和名である「香水草」や「匂ひ紫」、フランス語の別名「恋の花」など、様々な名前で親しまれています。

バニラのような甘い香りが特徴ですが、その強さは品種によって異なります。香りは揮発しやすく、開花初期には強く香るものの、数日経つと急速に薄れてしまう性質があります。ドライフラワーやポプリとしても利用されます。

香水

ロジェ・ガレ社の香水『Heliotrope Blanc』は、日本で初めて市販された香水として知られています。かつては南フランスなどで栽培され、天然の精油が採油されていましたが、収油率の低さと香りの揮発性の高さから、現在では合成香料が主流となっています。ヘリオトロープの花の香りの主成分であるヘリオトロピンが発見されたことで、合成香料による再現が可能になりました。夏目漱石の小説『三四郎』や江戸川乱歩の『暗黒星』にも、ヘリオトロープの香水が登場します。

園芸

本来、ヘリオトロープは耐寒性が低い灌木であり、種から育てると開花までに時間がかかるため、一般家庭での栽培は難しいとされていました。しかし、近年では早咲きの品種が登場し、住宅環境の変化も手伝って、家庭でも鉢植えやプランターで手軽に楽しめるようになりました。種まきは春に行い、霜の心配がなくなってから露地に定植すると、夏から秋にかけて花を楽しむことができます。挿し木でも容易に繁殖できるため、栄養繁殖も一般的です。露地植えでは越冬が難しいため一年草として扱われることが多いですが、鉢植えで室内管理すれば、複数年栽培することも可能です。現在では、大手園芸メーカーを中心に、白花品種や香りの異なる品種など、様々な品種が開発されています。

近縁種

ヘリオトロープには、様々な近縁種が存在します。

その他

ヘリオトロピン: ヘリオトロープの香りの主成分として知られる有機化合物。
ヘリオトロープ疹: 皮膚の病変の一つで、ヘリオトロープの色に似た紫色を呈する。
ヘリオトロープ (色): ヘリオトロープの花の色に由来する色名。

外部リンク

ヘリオトロープ - 新・花と緑の詳しい図鑑
* ヘリオトロープ - 外来語の色の名前

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