ヘルプ! (ビートルズのアルバム)

ビートルズ『ヘルプ!』：サウンドトラックを超えた音楽的傑作

ビートルズの5作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ヘルプ!』は、1965年8月6日にリリースされ、映画『ヘルプ!4人はアイドル』のサウンドトラック盤としても知られています。旧邦題は「4人はアイドル」。このアルバムは、映画で使用された楽曲と新曲から構成され、ビートルズの音楽的幅広さと実験性を示す重要な作品と言えるでしょう。

映画との密接な関係と音楽的多様性

アルバムのA面には映画『ヘルプ!4人はアイドル』で使用された楽曲が収録されており、ビートルズの主演映画との密接な関係が伺えます。一方、B面には新曲が収められており、彼らの音楽的多様性を示す楽曲が展開されています。例えば、ジョン・レノン作曲の「悲しみはぶっとばせ」はボブ・ディランの影響が感じられる一方、ポール・マッカートニー作曲の「夢の人」はカントリー風味を感じさせるなど、バラエティに富んだ楽曲が収録されています。また、「イエスタデイ」といった名曲もこのアルバムに収録されており、ビートルズの楽曲の幅広さを象徴しています。さらに、注目すべき点として、デビュー以来外部ミュージシャンを起用したことが少ないビートルズですが、「悲しみはぶっとばせ」と「イエスタデイ」のレコーディングには外部ミュージシャンが参加しています。この点も、本作の特徴の一つと言えるでしょう。

アルバムのCD化とリミックス

『ヘルプ!』は1987年にCD化されました。全曲はジョージ・マーティンによってリミックスされていますが、これはオリジナルのミックスに非常に忠実であり、積極的な現代化は行われていません。定位やエフェクト等の処理はほぼオリジナルの通りに再現されています。このリミックスは、1987年の最初のCD化の際に、『ヘルプ!』と『ラバー・ソウル』が第2弾として発売されることになり、当初モノラルでの発売を予定していたものが急遽ステレオに変更されたことに伴うものでした。『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』に収録されている同アルバムの楽曲も、このリミックスされたものが採用されています。2009年9月9日の最新リマスター（ステレオ盤）も、この1987年ヴァージョンを採用しています。CD化される以前のオリジナルミックスは、『ザ・ビートルズ MONO BOX』でステレオとモノラル両方がCD化されています。

個性的なジャケットデザインと隠されたメッセージ

イギリス盤と日本盤ではジャケットデザインに違いが見られます。イギリス盤は「HELP!」と「THE BEATLES」のロゴの高さがずれていますが、日本盤では綺麗に並んでいます。これは、レコード会社のロゴの位置の違いによるものです。また、日本盤は裏ジャケットの写真が異なっており、ゲイトフォールド（両開き）ジャケットになっています。ジャケット写真では、メンバーが手旗信号で"NUJV"の文字を表しています。これは裏焼きしても"KPUN"となり、撮影者のロバート・フリーマンによると、当初は"HELP"のポーズを考えていたものの、見栄えがよくなかったため、即興で変更されたそうです。

アメリカ盤『ヘルプ（四人はアイドル）』

アメリカでは、1965年8月にキャピトル・レコードによる編集盤『ヘルプ（四人はアイドル）』が発売されました。これは映画で使用された楽曲のみが収録された、純粋なサウンドトラック盤と言えるでしょう。そのため、映画のB面に収録された7曲は除かれており、これらの楽曲は他のアルバムに収録されています。このアメリカ盤は、Billboard 200で9週連続第1位を獲得するなど、大きな成功を収めました。しかし、長らく未CD化でしたが、2004年にボックスセット『ビートルズ'65 BOX』でモノラルとステレオ両方のヴァージョンが初CD化されました。

まとめ

『ヘルプ!』は、映画との連携、音楽的多様性、リミックスの歴史、そして個性的なジャケットデザインなど、様々な要素が絡み合った、ビートルズの歴史において重要な作品です。その音楽性は、現在でも多くのリスナーを魅了し続けており、ビートルズの音楽的進化を理解する上で欠かせないアルバムと言えるでしょう。様々なヴァージョンが存在することも、このアルバムの魅力の一つと言えるでしょう。

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