ヘルマン1世 (テューリンゲン方伯)

ヘルマン1世：文化を愛したテューリンゲン方伯

ヘルマン1世（Hermann I., 1155年頃 - 1217年4月25日）は、中世ドイツのテューリンゲン方伯であり、ルードヴィング家の一員でした。父はテューリンゲン方伯ルートヴィヒ2世、母はシュヴァーベン大公フリードリヒ2世の娘ユッタであり、神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世の甥にあたります。

生涯

1181年、ヘルマン1世は兄ルートヴィヒ3世からザクセン宮中伯位を継承しました。1190年にルートヴィヒ3世が第3回十字軍で亡くなると、テューリンゲン方伯位も引き継ぎました。

当時の神聖ローマ帝国は、フリードリヒ1世とハインリヒ獅子公の対立から、ヴェルフ家（ゲルフ家）とホーエンシュタウフェン家（ギベリン家）の争いが激化していました。ヘルマン1世は、この争いにおいて、12年の間に7回以上も立場を変えるという複雑な政治的動きを見せました。最終的に、1211年にはフリードリヒ1世の孫であるフリードリヒ2世をローマ王候補として支援することを決定しました。

文化への貢献

ヘルマン1世の最大の功績は、芸術と文化の庇護者としての役割です。彼はパリに留学した際にフランス文学に触れ、それをドイツ語に翻訳して祖国に紹介しました。このことがきっかけとなり、テューリンゲン方伯の宮廷は、当時の一流の詩人や作家が集まる文化の中心地となりました。

ハインリヒ・フォン・フェルデケの『アイネイアス物語』、ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの『パルツィヴァル』や『ヴィレハルム』、ヘルボルト・フォン・フリッツラーの『トロイの歌』など、中世ドイツ文学を代表する作品が、この宮廷から生まれました。ヴァルトブルク城は、ヘルマン1世の治世下でルードヴィング家の宮廷所在地となり、1206年または1207年には、有名な歌合戦が開催され、ヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデやヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハといった著名なミンネゼンガーが参加しました。

死とその後

ヘルマン1世は1217年4月25日にゴータで亡くなり、アイゼナハのカタリーナ修道院に埋葬されました。彼の死後、長男のルートヴィヒ4世がテューリンゲン方伯位を継承しました。

子女

ヘルマン1世は2度の結婚をし、多くの子をもうけました。最初の妻はヴェッティン伯ハインリヒ1世の未亡人であったゾフィア・フォン・ゾンマーシェンブルクで、彼女との間に2人の娘がいました。

ユタ：マイセン辺境伯ディートリヒと結婚後、ヘンネベルク伯ポッポ7世と再婚。
ヘートヴィヒ：オーラミュンデ伯・ホルシュタイン伯アルブレヒト2世と結婚。

2度目の妻はバイエルン公オットー1世の娘ゾフィアで、彼女との間には6人の子供がいました。

イルムガルト：アッシャースレーベン伯ハインリヒ1世と結婚（後に初代アンハルト侯爵）。
ルートヴィヒ4世：ハンガリー王エンドレ2世の娘エリーザベト（聖エリーザベト）と結婚。テューリンゲン方伯。
ヘルマン：早世。
ハインリヒ・ラスペ：テューリンゲン方伯、ドイツ対立王。
アグネス：オーストリア公レオポルト6世の息子ハインリヒと結婚後、ザクセン公アルブレヒト1世と再婚。
コンラート：ドイツ騎士団総長。

ヘルマン1世は、政治的な手腕とともに、文化人としての側面も持ち合わせており、彼が庇護した芸術家たちの作品は、今日でも中世ドイツ文学の重要な遺産として高く評価されています。彼が生きた時代は、ヴェルフ家とホーエンシュタウフェン家の対立という政治的な混乱期でしたが、その中で彼はテューリンゲンを文化的な中心地として発展させました。

参考文献

Peter Neumeister: Hermann I., Landgraf von Thüringen (1190-1217). In: Eberhard Holtz / Wolfgang Huschner (Hrsg.): Deutsche Fürsten des Mittelalters. Edition Leipzig, Leipzig 1995, 276-291. ISBN 3361004373

関連項目

タンホイザー
* 青い花 (小説)

もう一度検索