ヘルメット (野球)

野球・ソフトボール用ヘルメットのすべて

この記事では、野球とソフトボールで用いられる様々なヘルメットについて、その歴史的背景や種類、安全性の向上、そして着用に関する規則の変遷を詳細に解説します。

打撃用ヘルメット：安全性の進化

打撃用ヘルメットは、打者や走者が打球や投球による頭部への衝撃から身を守るために着用します。その歴史は、1920年にメジャーリーグで起きたレイ・チャップマン選手の死亡事故に端を発します。この悲劇をきっかけに、革製ヘルメットの開発が始まり、その後、ポリカーボネートなどの強化樹脂へと素材が進化しました。

初期の打撃用ヘルメットは、野球帽とほぼ同じ形状で耳当てのない半帽型が主流でした。しかし、頭部保護の重要性が認識されるにつれ、1940年代以降、ブルックリン・ドジャースや米国リトルリーグなど一部チームで着用が義務化されました。1950年代にはポリカーボネートの開発により普及が進み、MLBでは1970年に打者のヘルメット着用が正式に義務化されました。一方、NPBでは1971年から義務化されましたが、それでも着用を拒否する選手も存在しました。長嶋茂雄選手のように、見栄えを良くするために意図的に大きめのヘルメットを着用する選手もいました。

耳当ての普及：安全性と視界のトレードオフ

耳当ては、頭部への衝撃から側頭部を守るために重要な役割を果たします。片耳付きと両耳付きがあり、片耳付きの場合は投手側の耳に装着します。アマチュア野球では事故防止のため両耳付きの着用が義務付けられていることが多いです。プロ野球でも、1970年代に耳当て付きヘルメットの普及が始まりましたが、視界を遮る、風の音が気になるなどの理由から反対意見もありました。

NPBでは、耳当て付きヘルメットの着用を促進するために、移行期間を設けたり、耳当て無しヘルメットの着用者に対する保険適用を制限するなど様々な施策が取られました。最終的には1996年シーズンから、一定の条件を満たす選手は耳当て付きヘルメットの着用が義務付けられました。

フェイスガードの登場：さらなる安全対策

近年では、耳当てに装着するフェイスガード（C-FLAP）が普及しつつあります。これは、頭部への衝撃から顔面を保護するだけでなく、視界を狭めることで集中力を高め、打撃力の向上にも繋がるといわれています。MLBでは2010年代後半から普及し、日本プロ野球でも2018年から正式に使用が認められ、着用選手が増加しています。

打者以外へのヘルメット着用拡大

走者

走者も打撃用ヘルメットを着用することが義務付けられています。これは2011年の公認野球規則改正によるものです。

守備

捕手は、打撃用ヘルメットとは異なる、鍔と耳当て部分を省略した捕手専用ヘルメットを使用することが一般的です。近年では、アメリカンフットボールのようなフルフェイス型のヘルメットも使用されるようになっており、日本プロ野球でも一部選手が着用しています。他のポジションの選手が守備中に打撃用ヘルメットを着用するケースもあります。

ベースコーチ

2007年に発生したマイナーリーグのベースコーチの死亡事故をきっかけに、アメリカでは2008年からメジャーリーグを含む全レベルでベースコーチのヘルメット着用が義務化されました。日本でも、アマチュア野球では2009年、プロ野球では2010年から義務化されています。

まとめ

野球・ソフトボールにおけるヘルメットは、安全性の向上を目的として、その形状や機能、着用規則が大きく変化してきました。今後、さらに安全性の高いヘルメットが開発され、着用が普及していくことが期待されます。安全性と快適性の両立が今後の課題と言えるでしょう。

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