ヘルワン HA 300

ヘルワン HA 300について

ヘルワン HA 300（アラビア語でحلوان ٣٠٠）は、1960年代にエジプトで開発されたジェット戦闘機です。この機体は、当時西ドイツの航空技術者ウィリー・メッサーシュミットとイスパノ航空機によって設計されました。元々はスペイン空軍向けに小型迎撃機として計画されていましたが、最終的にプロジェクトはエジプトに移管されました。1969年にこのプロジェクトは中止されるまで、計3機の試作機が製造されました。

設計と開発の経緯

HA 300の開発は、ウィリー・メッサーシュミットが第2次世界大戦後、ドイツ国民として航空機製造に関する研究をしていた制限によりスペインに移住し、航空機会社を設立したことが始まりです。1951年から超軽量戦闘機の開発に取り組みましたが、その進展は遅く、最初は尾部の無いデルタ翼のグライダーの設計のみが完了しました。

1960年にはスペインがプロジェクトを放棄し、その後エジプトが設計を購入しました。メッサーシュミットと設計チームはエジプトのヘルワンでHA-300の設計作業を進め、エジプトの空軍に就役させるための軽量超音速単座戦闘機の開発を目指しました。

HA-300の特徴と性能

HA-300の開発はエジプト航空総局の監督の元、カイロの南東にあるヘルワンの第36工場で行われました。当初はオルフェースBOR 12ターボジェットエンジンを搭載する計画でしたが、その後ブランドナーE-300エンジンを装備することに変更されました。このE-300エンジンはインド政府の支援を得て開発され、1963年には初めて運転されました。

最初の試作機は1964年3月に初飛行し、マッハ1.13を記録しました。続いて2番目の試作機も1965年に飛行し、最終的にはE-300エンジンを搭載した3番目の試作機も計画されましたが、飛行テストには至りませんでした。開発には総額1億3,500万エジプト・ポンドが投じられました。

プロジェクトの中止

1967年に発生した6日戦争の影響で、エジプト政府は軍事費を新たな航空機や防空兵器の購入に向ける必要が生じ、1969年5月にHA-300プロジェクトは中止されました。この結果、エンジンの開発も停止され、HF-24 マルート戦闘機にE-300エンジンを搭載する計画も頓挫しました。

現在の状況

HA-300の最初の試作機は1991年にダイムラーベンツ・アエロスペース社によって買い取られ、ドイツに空輸されて修復されました。修復を手がけたMBB社によって5年半をかけて復元され、現在はミュンヘンのドイツ博物館に展示されています。

仕様

• - 乗員: 1名
• - 全長: 12.40 m
• - 全幅: 5.84 m
• - 全高: 3.15 m
• - 翼面積: 16.70 m²
• - 空虚重量: 2,100 kg
• - 運用重量: 5,443 kg
• - エンジン: オルフェース 703 / ブランドナー E-300 ターボジェット
• - 最大速度: 2,124 km/h (マッハ1.7)
• - 巡航高度: 12,000 m
• - 作戦航続距離: 1,400 km (870 miles, 755 nmi)
• - 初期上昇率: 203 m/s
• - 武装: イスパノ30 mm機関砲2基またはNS-23 23 mm機関砲4基、空対空ミサイル4基

このように、HA-300は当時の技術を集結した戦闘機でありながら、歴史の中で一時的にしか見られなかった機体でもあります。

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