ブランドナー E-300

ブランドナー E-300の概要

ブランドナー E-300（Brandner E-300）は、エジプトにおける航空機技術の発展を象徴するターボジェットエンジンです。このエンジンは、ヘルワン HA 300小型ジェット戦闘機のために開発されました。オーストリア人技術者のフェルディナント・ブランドナーが主導し、エジプトでの航空機設計に貢献しました。

開発の背景

ブランドナーは、以前にソビエト連邦での経験を持ち、ツポレフ Tu-95爆撃機の動力源であるクズネツォフ NK-12 ターボプロップエンジンを開発していました。1960年代初頭、彼はエジプトに移住し、ドイツ人技術者と共にヘルワン HA 300のエンジン設計を始めました。当初はブリストル社製のオーフュース R-12エンジンを搭載する計画でしたが、その推力不足と高コストから新しいエンジンの自社開発が決定されました。

エジプトの第135工場で、280名以上の専門家が集まり、エンジン開発が進められました。デザインの参考には、フランスのスネクマ製スネクマ アター 9 Cや他国の技術が用いられました。このエンジンはHA 300のみならず、将来的なHF-24 マルートにも搭載される予定でした。

技術的特徴

E-300の設計は、アフターバーナーを搭載したターボジェットエンジンという特徴を持ち、以下のスペックがあります：

• - 全長: 4,300 mm
• - 直径: 840 mm
• - 乾燥重量: 860 kg
• - 圧縮機: 9段軸流
• - 燃焼室: 環状筒形燃焼器
• - タービン: 2段軸流タービン
• - 最大推力: ドライで32.4 kN、アフターバーナー作動時に47.2 kN
• - 圧縮比: 6:1

これらの数値は、E-300が高い性能を持ったエンジンであることを示しています。

テストと試作

ブランドナー E-300は、1963年にベンチテストを行い、アントノフ An-12の主翼下に搭載されての飛行テストも行われました。HF-24 マルートへの搭載テストは1967年に実施されましたが、試作機の飛行は実現しませんでした。本プロジェクトは1969年に中止されることとなります。

派生型

ブランドナー E-300には、以下のような派生型があります：

• - E-300-A: HA-300向けの軍用モデル
• - E-300-C1: 民間向けに提案された3発旅客機用エンジン
• - E-300-C2: E-300-C1の改良型
• - E-300-AF: ターボファンエンジン版として計画されたモデル

まとめ

ブランドナー E-300は、航空エンジン開発の歴史の中で重要な位置を占めていますが、予定していた飛行試験が行われなかったため、その運用実績はありませんでした。それでも、このエンジンの設計と開発は、エジプトの航空技術向上に寄与したと言えるでしょう。

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