ヘレネ (衛星)

ヘレネ (Saturn XII Helene)

ヘレネは、土星の第12番目の衛星であり、ディオネとほぼ同じ軌道を公転しているトロヤ衛星の一つです。この衛星は、ディオネの前方にあるラグランジュ点（L4）に位置しており、特異な軌道運動をしています。

発見と命名

ヘレネは、1980年3月1日にピエール・ラキューズとジャン・レカシューによって、ピク・デュ・ミディ天文台での観測中に発見されました。この発見は、同年3月6日に国際天文学連合のサーキュラーで公表され、最初は「S/1980 S 6」という仮符号が与えられました。観測には、1.05メートルの反射望遠鏡が使用されました。その後、アメリカ海軍天文台でも観測が行われました。

当初、ヘレネはディオネと非常に似た軌道周期を持つ衛星として認識され、「Dione B」とも呼ばれていました。1983年9月30日には「Saturn XII」という確定番号が与えられましたが、この時点ではまだ命名はされず、「Dione B」という呼称が引き続き使用されていました。ヘレネという名前が正式に採用されたのは、1988年6月8日のことです。この名称は、ギリシア神話に登場する美しい女性、ヘレネに由来します。

トロヤ衛星

ヘレネは、ディオネと同一の軌道上にあり、ディオネのラグランジュ点（L4）に位置するトロヤ衛星です。トロヤ衛星とは、惑星と大きな衛星などの重力的な影響によって安定する特定の点（ラグランジュ点）に位置する衛星のことを指します。ディオネの後方のラグランジュ点（L5）には、同じくトロヤ衛星であるポリデウケスが存在しています。この配置は、ディオネとヘレネが1:1の平均運動共鳴を起こしていることを示しています。

同様の力学的関係を持つ土星の衛星には、テティスとそのラグランジュ点に存在するテレストとカリプソがあります。これらの衛星も、特定のラグランジュ点に位置し、安定した軌道運動をしています。

観測

ヘレネが初めて観測されたのは1980年で、この観測は地上から行われました。その後、1981年8月にはボイジャー2号によって不鮮明ながら画像の撮影に成功しました。しかし、詳細な観測は、カッシーニ探査機によって行われました。カッシーニは、2010年3月3日にヘレネに1万9千kmまで接近し、非常に鮮明な画像を撮影することに成功しました。これらの画像から、ヘレネの表面には、滑らかな部分と、細かいクレーターで覆われた部分が混在していることが判明しました。この二面性は、ヘレネの興味深い特徴の一つです。

まとめ

ヘレネは、土星の特異な衛星であり、ディオネとの共軌道関係や、表面の二面性など、多くの興味深い特徴を持っています。今後の観測によって、この小さな衛星のさらなる謎が解き明かされることが期待されます。

関連情報

ラグランジュ点に存在する物体の一覧

外部リンク

ザ・ナインプラネッツ 日本語版（ヘレネ）
Helene has two faces - The Planetary Society
Helene Mini Atlas - 2010年3月11日

もう一度検索