ヘンリー・フィッチ・テイラー

ヘンリー・フィッチ・テイラー：アメリカ・キュビスムの先駆者

ヘンリー・フィッチ・テイラー（1853年9月15日 - 1925年9月10日）は、アメリカ合衆国の画家であり、アメリカにおけるキュビスム絵画の先駆者の一人として知られています。彼は、アメリカ初の国際展であるアーモリーショーの組織委員会の初代委員長を務め、アメリカ美術界に大きな影響を与えました。

生涯

テイラーはオハイオ州シンシナティで生まれました。幼少期から演劇に興味を持ち、俳優のジョセフ・ジェファーソン一座に加わります。ジェファーソンはアマチュア画家でもあり、テイラーに美術を学ぶことを勧めました。その助言を受け、テイラーはパリに渡り、アカデミー・ジュリアンで美術を学び始めます。

1885年、テイラーは風景画家たちが集まるバルビゾンを訪れ、絵を描きました。3年後には印象派のスタイルを身につけてアメリカに帰国し、1891年には米国芸術家協会の準会員に選ばれました。しかし、その後は画家としての創作活動は徐々に減っていきました。

1898年から1908年の間、テイラーはコネチカット州グリニッジのコスコブ芸術コロニーに滞在しました。そこには、ジョン・ヘンリー・トワックトマン、フレデリック・チャイルド・ハッサムといった画家や、作家のウィラ・キャザーらが集まりました。アーサー・ボーウェン・デービス、ジョージ・ラクス、そしてアーモリーショーの立役者となるウォルト・クーンらもコスコブを訪れています。

1908年、テイラーは後に妻となるクララ・ポッター・デーヴィッジと共に、ニューヨークのマジソン画廊の経営を始めました。マジソン画廊は、ジョージ・ベローズやウォルト・クーンといった有名画家の展覧会を開催する一方で、リチャード・E・ミラー、フレデリック・カール・フリージキー、エドマンド・グリーセンといった次世代の画家たちの展覧会も開催し、注目を集めました。

テイラーはクーンらと共にアメリカ画家・彫刻家協会を設立し、初代会長に就任しました。1912年にアーサー・デーヴィスに会長職を譲りますが、理事として協会に留まりました。この協会が、アメリカ初の国際美術展覧会であるアーモリーショーを開催することになります。

キュビスムへの傾倒

アーモリーショーの準備期間中に、テイラーは創作活動を再開し、当初はセザンヌの画風に影響を受けた作品を描いていました。しかし、1914年の展覧会でフランスのキュビスム画家、アルベール・グレーズの作品に出会ったことがきっかけで、キュビスムの作品を手がけるようになりました。

テイラーは、「シンクロニズム」を提唱したアメリカの抽象絵画の先駆者、モーガン・ラッセルやスタントン・マクドナルド＝ライトとも親交を深めました。

ヘンリー・フィッチ・テイラーは、アメリカ美術界におけるキュビスムの導入に貢献した重要な画家であり、アーモリーショーの開催を通じて、アメリカの美術シーンに大きな変革をもたらしました。彼の作品は、現在でも多くの美術館で鑑賞することができます。

もう一度検索