ヘンリー・ロイド

ヘンリー・ハンフリー・エヴァンズ・ロイド

ヘンリー・ハンフリー・エヴァンズ・ロイド（1720年 - 1783年）は、18世紀のイギリスにおいて軍人及び軍事学者として活躍した重要な人物です。彼は北ウェールズのレックシャム村に生まれ、父は牧師でありました。1744年にはフランスのイエズス会学院で学び、その後オックスフォード大学のジーザス・カレッジで高等教育を受けました。在学中、スチュアート家を支援していたドラモンド家の家庭教師となり、地理学や土木工学を教えました。

その後、ロイドはフランス軍に入隊し、モーリス・ド・サックスが指揮する部隊に配属されました。1745年にはオーストリア継承戦争に従事し、フォントノワの戦いで作戦遂行に役立つ地形図を作成することで評価され、工兵隊の下級将校に昇進しました。また、スチュアート家の反乱に際しては工兵将校として参加し、スコットランドに派遣された後、ウェールズに戻って反乱支持者を募るために活動しました。この時、ロイドは聖職者に扮してイングランド沿岸を偵察していたため逮捕されたこともあります。

1748年にはプロイセン軍に勤務し、1754年にはイギリスへの着上陸作戦についての偵察を行い、彼の報告によりこの作戦は中止されました。1757年にはオーストリア軍に中佐として所属し、フランツ・モーリッツ・フォン・ラシ元帥の副官として七年戦争に参加しました。この戦争では偵察任務に従事し、その後コルシカ独立戦争ではイギリス政府の諜報員として活動しました。1773年からはロシア帝国軍に少将として加わり、オスマン帝国との戦争計画に参加しました。

ロイドがイギリスに帰国後は、七年戦争や軍事理論に関する著書を執筆しました。彼の初となる著作は『プロイセン王とドイツ女帝の近年の戦争史』で、これは1766年に匿名で発表されました。この著作は、プロイセンの軍人及び軍事学者ゲオルク・フリードリヒ・フォン・テンペルホーフによって評価され、1794年にはドイツ語版が発行されました。

ロイドは特に『軍事的回想』において重要な業績を残しました。この本は1781年に発表され、1783年には改訂版として再版され、さらに翻訳版がプロイセン及びオーストリアで広く読まれました。彼の著作の特徴は、その理論が体系的に整理されている点にあります。ロイドは、戦争における軍事行動は計算可能であるとし、戦争術を科学的なものとして確立しようと試みました。これにより、彼の軍事思想はその後の軍事学に大きな影響を与えることとなり、著名な軍事史家マイケル・ハワードはロイドの思想がフランスの軍事学者アントワーヌ・アンリ・ジョミニに影響を及ぼしたと位置付けています。

ロイドは1783年にネーデルラントのハーグで亡くなりましたが、彼の業績は現在でも多くの研究者に引き継がれています。彼の提唱した軍事理論は、後の軍事戦略や戦術に多くの影響を及ぼしました。

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