ヘンレループ

ヘンレループ：腎臓における水の再吸収と濃縮の鍵

腎臓は、体内の老廃物を除去し、体液のバランスを維持する上で重要な役割を担う臓器です。その機能の中核を成すのが、ネフロンと呼ばれる単位で、その中でヘンレループは、尿の濃縮に不可欠な構造物です。

ヘンレループ、またはヘンレ係蹄は、腎臓のネフロンにおける尿細管の一部で、近位尿細管の終端から遠位尿細管の起始部までを繋ぐヘアピン状のループ構造をしています。このループは腎髄質に位置し、尿中の水分と電解質の再吸収という重要な役割を担っています。その発見は、ドイツ人解剖学者であるヤーコプ・ヘンレによるものです。

ヘンレループの構成

ヘンレループは、大きく分けて4つの部分から構成されています。

1. 下行脚 (Descending limb): 近位尿細管から続く部分で、髄質部に向かって下降します。この部位では、水分の透過性が非常に高く、尿中の水分が髄質部の高浸透圧環境へと移動します。
2. 下行脚の細部: 下行脚は更に、薄下行脚と厚下行脚に分類されることもあります。薄下行脚は水分透過性が高く、尿が濃縮されます。厚下行脚では、尿素の透過性が高く、尿素の再吸収も行われます。
3. 上行脚 (Ascending limb): ループの底から尿が上昇する部分です。この部位では、水分の透過性が低く、ナトリウムや塩化物イオンなどの電解質が能動輸送によって再吸収されます。
4. 上行脚の細部: 上行脚も、薄上行脚と厚上行脚に分類されます。薄上行脚は比較的、水分透過性が低く、電解質の再吸収が主です。厚上行脚は、電解質の能動輸送により、尿を薄くします。

対向流交換系

ヘンレループは、効率的な水と電解質の再吸収を行うために、対向流交換系という巧妙なメカニズムを利用しています。このシステムでは、下行脚と上行脚が互いに逆向きに血液と尿が流れ、濃度勾配が維持されます。上行脚での電解質の再吸収により、髄質部が高浸透圧に保たれ、下行脚での水の再吸収を促進します。この結果、尿は濃縮され、体内の水分を節約することができるのです。

血液供給：直細動脈の役割

ヘンレループには、輸出細動脈から分岐する直細動脈 (vasa recta)と呼ばれる毛細血管が血液を供給しています。この直細動脈は、ヘンレループに沿って下降と上昇を繰り返し、対向流交換系に重要な役割を果たします。直細動脈は、髄質部からの溶質の流出を防ぎ、高浸透圧環境を維持することに貢献しています。また、下行脚から再吸収された水分は直細動脈に吸収され、循環系に戻ります。

まとめ

ヘンレループは、腎臓における水の再吸収と尿の濃縮に必須の構造です。対向流交換系という巧妙なメカニズムによって、効率的に水分と電解質のバランスを調節し、体内の水分を節約する上で重要な役割を果たしています。その複雑な構造と機能は、腎臓の驚くべき能力を物語っています。

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