ベイドン山の戦い

ベイドン山の戦い

ベイドン山の戦い（Battle of Mons Badonicus）は、ブリトン人とアングロ・サクソン人の間で行われた重要な戦闘です。この戦いがいつ、どこで、いかなる指揮官によって行われたのかは、はっきりとした記録が残っていないため、その詳細は未解明のままです。多くの資料が存在しますが、時代や地点の特定には矛盾があり、確定的な情報は少ないのが実情です。戦いはおそらく6世紀前後に行われたと考えられていますが、具体的な年代は資料によって異なります。

歴史的資料

戦闘の最も古い記録として知られるギルダスの『ブリトン人の没落（De Excido Britanniae）』では、戦いは著者の生没年に関わっているとされていますが、その生年が明らかではないため、定かではありません。この書には、誰がケルト軍の指揮を執ったのかについての言及がなく、戦争の形態や包囲戦の内容も不明です。しかし、結果的にはケルト側が勝利を収めたことだけは伝わっています。

9世紀に執筆されたネンニウスの『ブリトン人の歴史』には、アーサー王が登場し、彼の活躍が強調されています。この資料によれば、アーサーは960人の敵兵を一手に倒したとされ、戦場は12箇所に及び、そのうち最後がベイドン山です。しかし、これらの戦場がどこにあるのかについては明確な証拠がなく、アーサーの話も伝説的な要素が強いとされています。

カンブリア年代記と年代

11世紀のカンブリア年代記では、戦いの時期を516年から518年と記録しており、これを支持する見解は存在しますが、ギルダスの記述との整合性が取れません。また、この年代記でもアーサー王に言及されており、彼が十字架を担ぐ業績が述べられています。このように、さまざまな歴史的資料が存在するものの、ベイドン山の戦いを正確に理解するには限界があります。

戦いの影響

ベイドン山の戦い後、ブリトン人は一時的にアングロ・サクソン人を撃退しましたが、最終的にはブリタニアはサクソン支配の下に置かれることになります。アングロ・サクソン年代記には、ベイドン山の戦いに対する具体的な言及は見られませんが、その後の時代におけるリーダーの空位期間や、移住の背景に影響を与えたと考えられる要素が述べられています。考古学的な資料は、アングロ・サクソン人と原住民の境界線が500年代に移動したことを示唆しており、侵入の要因としての転機を見出す説も存在します。

アーサー王と文学

ベイドン山の戦いは、アーサー王物語の中でしばしば取り上げられています。例えば、ブルフィンチ版や映画『キング・アーサー』ではこの戦いに焦点を当てています。ただし、アーサー王が敵の指揮官の名前や戦いの詳細についての記述が存在せず、文献ごとに解釈が異なるため、実際のところは謎に包まれています。

このように、ベイドン山の戦いは多くの謎と伝説に包まれた歴史的事件であり、ブリトン人とアングロ・サクソン人の関係やアーサー王の物語に深く関与しています。詳細な事実が不明でありながら、それが後の歴史や文学に与えた影響により、その重要性は今もなお語り継がれています。

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