ベイルート港

ベイルート港の歴史と現状

ベイルート港は、レバノンの首都ベイルートに位置する主要港であり、地中海東部における重要な物流拠点です。その歴史は長く、オスマン帝国時代にまで遡ります。ここでは、ベイルート港の歴史、運営、そして過去に発生した悲劇的な出来事について詳しく解説します。

オスマン帝国時代からフランス委任統治領時代

1887年、オスマン帝国はフランス企業にベイルート港の運営権を与えました。この企業は「ベイルート港湾岸壁倉庫会社」として知られ、港の発展に重要な役割を果たしました。その後、1920年にレバノンがフランスの委任統治領となると、ベイルート港はフランスからの財政支援を受け、貿易拠点としての重要性を増しました。運営は引き続きフランス企業が行いましたが、後に「ベイルート港湾局」と改名されました。

レバノン内戦と再建

レバノン内戦中、ベイルート港は大きな被害を受け、港の一部は民兵組織に支配されました。1976年には、民兵組織の衝突によって港の船積み業務が9ヶ月間完全に停止しました。1977年には「倉庫や設備で無傷なものは1つもなかった」と報じられています。その後、1980年代にはキリスト教系民兵組織レバノン軍団が一時的に港を支配しましたが、1991年にレバノン軍によって排除されました。内戦後、ベイルート港は再建され、再び主要港としての地位を取り戻しました。

運営とコンテナターミナル

現在、ベイルート港の運営は「ベイルート港湾局」が行っています。1990年以降はレバノン政府が直接所有していますが、運営は引き続き同局が担当しています。2004年からは、コンテナターミナルの運営は民間の「ベイルートコンテナターミナル協会（BCTC）」が請け負っています。ターミナルの岸壁は1,100メートルに拡張され、ポスト・パナマックス船対応のガントリークレーン16機を保有し、年間120万TEU以上のコンテナを取り扱っています。輸出入だけでなく、コンテナの積み替えも多く行われています。

2020年ベイルート爆発事故

2020年8月4日、ベイルート港で大規模な爆発事故が発生しました。この事故で218人が死亡、7000人以上が負傷しました。爆発は、港に長期間保管されていた2,750トンの硝酸アンモニウムが原因でした。この硝酸アンモニウムは、2013年にモルドバ船籍の貨物船が運んできたものでしたが、その後放棄され、適切な管理がなされないまま放置されていました。港の税関担当者は、その危険性を繰り返し警告していましたが、政府は対策を講じませんでした。

爆発の影響

爆発により、港の大部分が破壊され、ベイルート市の広い範囲に被害が及びました。住宅を失った人は30万人に上り、推定被害額は数十億ドルに達するとされています。クルーズ船も転覆するなど、港湾施設だけでなく周辺地域にも深刻な影響を与えました。

事故後の対応

爆発後、レバノン政府は港湾管理責任者を自宅監禁し、事故の原因究明に乗り出しました。しかし、事故の背景には長年にわたる汚職や怠慢があり、社会全体に根深く蔓延した問題が浮き彫りになりました。

まとめ

ベイルート港は、レバノンの経済にとって重要な役割を果たしていますが、同時に数々の困難に直面してきました。内戦、汚職、そして大規模な爆発事故など、多くの試練を乗り越えながら、港は再建と発展を目指しています。ベイルート港の歴史は、レバノンの歴史そのものであり、その動向は今後の同国にとって重要な意味を持つと言えるでしょう。

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