ベイルート港爆発事故

ベイルート港爆発事故の概要

2020年8月4日、レバノンの首都ベイルートにある港で大きな爆発が発生し、多くの人々が犠牲になりました。この事故は、レバノンの歴史において最も悲惨な事件の一つとされ、都市の半分以上に影響を及ぼしました。

爆発の詳細

現地時間の18時頃、小規模な爆発の後に大規模な爆発が発生しました。最初の爆発では火と煙が見られ、その5分後に起きた二度目の爆発は、広範囲にわたる衝撃波を引き起こしました。この衝撃は、ベイルートの中心部を揺らし、周囲の地域やキプロス島でも観測されたほどです。科学者たちは、この爆発による衝撃波はマグニチュード3.3の地震に相当すると分析しています。

爆発のエネルギーは推定で0.5から1.1キロトン（TNT換算）とされ、広島に投下された原爆の約1/20の威力です。

原因

爆発の原因は、硝酸アンモニウムの不適切な保管に起因しています。かつてモルドバから輸送されたこの物質は、2014年に事故でベイルート港に立ち往生した貨物船MV Rhosusに積まれていました。その後、港で適切に管理されず、6年間も倉庫に放置され、最後には溶接作業中に発生した火花から引火し、爆発を引き起こしました。政府による情報では、この硝酸アンモニウムが爆発の直接的な原因であったとされています。

被害の状況

爆発によって218人が死亡し、7,000人以上が負傷しました。また、約30万人が住居を失ったとされています。衝撃波の影響で、キプロスの家々も損傷するほどの広範囲にわたる被害が発生しました。現地では、重要な施設や、ベイルート市の穀物倉庫が大きな被害を受け、食糧供給にも深刻な影響を及ぼしました。

特に、爆発によりレバノンの穀物備蓄の85%が失われ、COVID-19パンデミックの影響でさらに厳しい状況でした。また、クルーズ船オリエント・クイーンが損傷を受け、乗員2人が亡くなりました。

救援活動

事故後、レバノン赤新月社が主導し、全国から救急車が派遣されましたが、病院側も被害を受け、十分な収容ができない状況でした。一部地域には国際的な援助が寄せられ、医療物資が提供されるなどの支援が行われました。

政府の反応

爆発の翌日、レバノン政府は全国的な追悼日を設定し、被害者への哀悼の意を表しました。また、政府は避難民の支援を約束し、保健省が負傷者の治療費用を負担すると表明しました。しかしながら、事故の管理体制に対する批判が高まり、国民の不満が爆発。これにより、政府内で辞任が相次ぎ、首相が内閣総辞職を発表する事態に発展しました。

事故の影響を受けたベイルートは、復興の道を歩むことになりますが、都市の再建には多くの時間と努力が必要です。

もう一度検索