ベオグラード＝バール鉄道

ベオグラード＝バール鉄道は、セルビアの首都ベオグラードとモンテネグロの主要港湾都市バールを結ぶ、全長476kmの鉄道路線です。通称「バール鉄道」として知られています。

路線概要

単線標準軌の路線は、セルビア領内を301kmに渡って走り、平均海抜は175m。山岳路線であるため急勾配が多く、強力な電気機関車が必要とされ、全線が交流電化（25kv50Hz）で建設されました。

路線の特徴として、総延長114,435mに及ぶ254箇所のトンネルと、総延長14,598mに及ぶ435箇所の橋梁が挙げられます。特に、ソジナ・トンネル（6.17km）とズラティボル・トンネル（6.17km）は路線内で最長のトンネルであり、マラ・リイェカ橋梁は、長さ498m、地上高198mを誇る有名な橋梁です。

路線内の最高地点はコラシンで、海抜1,032m。そこからモンテネグロの首都ポドゴリツァ（海抜40m）へは、比較的短い距離を25‰の勾配で下ります。また、シュトルプツィ付近では、ボスニア・ヘルツェゴビナ領内を約9kmに渡って通過します。

全線完成時には、ベオグラードからバールまで約7時間で到達可能でしたが、現在は軌道の安全性の問題から通常10時間程度を要します。そのため、全線で改良計画が進められています。

歴史

第二次世界大戦後、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の中核プロジェクトとして、1951年に着工されました。内陸の首都ベオグラードと、アドリア海に面する貿易港バールを、他国を経由せずに最短距離で結ぶ戦略的な目的がありました。

しかし、予定路線は道路もまばらなディナル・アルプス山脈の深い山岳地帯。2本の長大トンネルと、当時世界で最も高いマラ・リイェカ橋梁を含む難工事が続き、完成までに25年の歳月を要しました。

完成区間と年度は以下の通りです。

1958年: レスニク - ブレオツィ
1959年: ポドゴリツァ - バール
1968年: ブレオツィ - ヴァリェヴォ
1972年: ヴァリェヴォ - ウジツェ
* 1976年: ウジツェ - ポドゴリツァ

1975年9月27日に建設工事は完了し、軌道はコラシンの南側で繋がりました。しかし、本来の目的で機能したのはわずか15年間。1991年のユーゴスラビア崩壊後、慢性的な財源不足により荒廃が進み、安全が確保できなくなりました。ビオチェでの列車脱線事故（死者47名）を契機に、全線で補修が進められることになりました。

1999年には、コソボ紛争によるNATO軍の空爆で深刻な被害を受け、ボスニア・ヘルツェゴビナ領内も平和安定化部隊によって損傷を受けましたが、戦後全線で復旧されました。

2006年にモンテネグロがセルビアから独立したことで、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロの3国を通過する国際鉄道となりました。現在では、貨物輸送は減少し、風光明媚な山岳地帯を走る観光鉄道として、徐々に人気を集めています。

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