ベオグラード1999

『ベオグラード1999』: セルビアと日本のナショナリズムを考える

『ベオグラード1999』は、2009年に公開された日本とセルビアの合作によるドキュメンタリー映画です。この作品は、ナショナリズムを深く掘り下げ、その矛盾や影響を明らかにすることを目的としています。映画の心臓部には、日本在住の映像作家、金子遊が10年間にわたって密に取材した、戦争前のイラク、紛争の真っただ中にあった旧ユーゴスラビア、および日本の民族派団体の活動があります。そのため、この映画は単なるキャメラを通した視点ではなく、作成者自身の内面的な変化を映し出している作品でもあります。

映画制作の背景

この映画のきっかけとなったのは、2006年に金子の元恋人が民族派団体の事務所での5年間の勤務の後に突然亡くなった出来事です。この悲劇が引き金となり、金子はナショナリズムについて徹底的に考え直し、自身の価値観にも疑問を抱くようになりました。映像作家としての目を通して、彼はナショナリズムが引き起こす戦争や人々の悲劇について深く掘り下げることを決意しました。

映画では、セルビアにおけるウルトラ・ナショナリストのヴォイスラヴ・シェシェリや、ユーゴスラビア最後の大統領であったヴォイスラヴ・コシュトニツァ、またセルビア民兵の指導者などに対するインタビューが特徴的です。これらの貴重なインタビューは、彼らがどのようにして自己の理念を構築し、ナショナリズムを推進していったのかを直接的に示しており、見る者に深い考察を促します。

公開と受容

『ベオグラード1999』は、初公開の2009年6月にneofest2009春で観客投票第1位を獲得し、その後の映画祭でも高い評価を受けました。同年の10月には田辺・弁慶映画祭のコンペティション部門にノミネートされ、その後も多くの映画祭で取り上げられました。特に2010年には、奈良前衛映画祭やTAMA CINEMA FORUM映画祭など多くのイベントで上映され、観客との対話を重視した「30daysバトルトーク」と題された上映後のトークセッションが話題となりました。

このトークでは、金子自身が宮台真司や鈴木邦男といった著名なゲストと対談し、作品の背景やナショナリズムに関する議論を交わしました。2011年にも大阪の第七藝術劇場での上映が行われ、観客に新たな視点を提供しました。

映画の意義

『ベオグラード1999』は、セルビアと日本のナショナリズムを鋭く批判することによって、観る者に強いメッセージを伝えています。この映画は単なる記録にとどまらず、ナショナリズムが人々に与える影響や、歴史的な背景についてともに考える機会を提供しています。これにより、観客は出発点としてのナショナリズムと、その結果としての苦悩を理解し、未来を考える貴重な視点を得ることができるのです。

関連項目

• - ユーゴスラビア
• - 言論の自由
• - 公式ウェブサイト
• - 監督のインタビュー（WEB DICE）

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