ヴォイスラヴ・シェシェリ

ヴォイスラヴ・シェシェリ：セルビアの政治家の生涯と軌跡

ヴォイスラヴ・シェシェリ（セルビア語: Војислав Шешељ、1954年10月11日 - ）は、セルビアの政治家であり、セルビア急進党の創設者、党首として知られています。また、ユーゴスラビア紛争に加担した民兵組織「白い鷹」の創設者でもあります。彼の政治活動は、セルビア国内外で大きな議論を呼び、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷（ICTY）での訴追と裁判は国際的な注目を集めました。

生い立ちと教育

シェシェリは、1954年にサラエヴォ（現ボスニア・ヘルツェゴビナ）で生まれました。彼の家族は、トレビニェ近くのポポヴォ・ポリェから移ってきました。父はモンテネグロ出身、母はヘルツェゴビナの古いセルビア人の家系の出身です。シェシェリはサラエヴォ大学で法学を学び、卒業後に博士号を取得。ユーゴスラビアで最も若い博士号取得者となりました。その後、アメリカ合衆国のミシガン大学で政治学を教え、サラエヴォに戻り1984年まで教鞭をとりました。

政治家としての台頭

1980年代、シェシェリはユーゴスラビアの共産主義体制に対する批判的な言動により、当局から反革命活動の罪で有罪判決を受けました。しかし、最高裁判所によって減刑され、1986年に出所しました。1989年にはアメリカ合衆国に渡り、第二次世界大戦時のチェトニック指導者モムチロ・ジュイッチから「チェトニックのヴォイヴォド」の称号を授与されました。帰国後、ヴク・ドラシュコヴィッチやミルコ・ヨヴィッチと共に、反共主義組織であるセルビア民族復興党（SNO）を設立。その後、セルビア急進党を結成し、党首としてセルビアの政治に深く関与することになります。

ミロシェヴィッチとの関係と対立

ユーゴスラビア紛争初期、シェシェリはセルビア大統領スロボダン・ミロシェヴィッチと良好な関係を築いていました。しかし、ミロシェヴィッチがボスニア・ヘルツェゴビナ紛争においてスルプスカ共和国への支援から手を引いたことで、両者の関係は悪化。シェシェリはミロシェヴィッチを批判し、1994年から1995年にかけて再び収監されました。その後、1998年にコソボでの暴力が激化すると、シェシェリはミロシェヴィッチの挙国一致内閣に加わりました。

コソボ紛争とNATO空爆

コソボ紛争とNATOによるセルビア空爆の間、シェシェリとその党はミロシェヴィッチ政権を支持しました。しかし、空爆が続く中で、シェシェリの党はNATOへの投降に反対する唯一の政党となりました。シェシェリは、ユーゴスラビア国内で活動する外国メディアや人権団体を批判し、彼らが外国のプロパガンダを流布していると非難しました。1998年から2000年まで、シェシェリはセルビアの副大統領を務めました。

ICTYによる訴追と裁判

2003年2月、シェシェリは戦争犯罪および人道に対する罪の容疑で旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷（ICTY）に自首し、ハーグに移送されました。彼は「8件の人道に対する罪と、組織犯罪への加担の疑いによる6件の戦時国際法違反」で訴追されました。拘留中、シェシェリはNATOの事務総長（後の欧州連合の共通外交・安全保障政策上級代表）ハビエル・ソラナをコソボ紛争を引き起こしたとして非難する著書を執筆しました。

ICTYが自身の弁護団を自由に選ぶ権利を否定した後、シェシェリはハンガーストライキを行いました。2007年1月には、ハーグに拘置されながらもセルビア議会選挙の候補者名簿のトップに名を連ねました。2016年3月31日、シェシェリ不在の中で無罪判決が言い渡されましたが、2018年4月11日、ICTYを継承した国際刑事法廷メカニズムは人道に対する罪3件を有罪とし、禁錮10年の有罪判決を言い渡しました。しかし、シェシェリはすでに12年間勾留されていたため、改めて身柄を拘束されることはありませんでした。

その他の言動

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の和平交渉で西側への妥協姿勢を示したスロボダン・ミロシェヴィッチ政権に抵抗し、政権と関係が悪化した際には、ミロシェヴィッチはシェシェリを「暴力と単純性の化身」と呼びました。また、1992年の学生による反対運動やタクシー運転手のストライキの際、シェシェリは群衆に銃を向けたこともありました。ICTYに対して侮辱的な手紙を送ったこともあり、その内容をカメラの前で読み上げるように求められた際には、法廷の上層部や判事に対する大量の侮辱を口にしました。

ヴォイスラヴ・シェシェリは、セルビアの政治において常に議論の的となる人物であり、その行動と発言は多くの人々に影響を与え続けています。

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